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電子書籍市場は今年こそ普及に向けた軌道に乗れるか
スマートフォンの普及と同様に、急激な普及を進めるタブレット端末。2010年5月にアップルが日本でiPadを発売し、タブレット端末の年間出荷台数は81万台。2011年には他のコンピューターメーカーからも次々と商品化され、前年の2倍強となる188万台もの出荷がされている。ICT総研によると、2015年には2010年比約7倍の557万台の市場規模に達すると予想されているなど、今後も普及の勢いは止まらないと見られている。
こうした中、2010年が元年だと騒がれた電子書籍市場は、矢野経済研究所によると、2010年度は670億円と前年度比6.3%増。2011年度の同市場規模は723億円と同7.9%増が見込まれているものの、タブレット端末の普及と比べるとその伸長は鈍い。現在所有のタブレット端末で利用されている機能・サービスは80%以上がインターネット検索・閲覧。次いでEメールが55.6%、動画・映像の視聴が51.6%と、電子書籍としての利用は上位にランキングされておらず、近いものでは辛うじて8位に文章の閲覧・編集・作成が20%ほど認められるだけである。
電子書籍がなかなか普及しない原因として日本の大手出版社の腰の重さが指摘されていたが、今年4月2日になって、角川書店や講談社・集英社・小学館など、大手出版社が参画する出版デジタル機構がスタートし、2000億円市場、5年後に100万タイトルの電子書籍の出版を目指すと発表。かねてから電子書籍専用端末を発売しているソニーも、手塚治虫作品入りReaderの発売を開始し、幅広い年齢層に向けた電子書籍の普及を図るなど、元年と言われてから2年でようやく本格普及に向けた動きが活発化してきた様子である。
近時中にアマゾンが提供する電子書籍サービス「キンドル」が日本上陸するとの情報も、本格普及に向けた動きが一気に活発化した理由の一つであろう。4月17日には朝日新聞が、学研ホールディングスや主婦の友社・PHP研究所など国内の約40社がアマゾンとの配信契約について合意したと報じるなど、2011年は沈静化していた電子書籍関連のニュースも多く聞かれるようになってきた。こうした動きを受けて矢野経済研究所は、電子書籍市場が2014年度には1197億円、2015年度には1500億円となると予測するなど、拡大が急速に進むと予想している。
しかし、先のアマゾンとの合意に関する報道では、ITmediaによると実際には合意には至っておらず、各社未だ交渉段階であるいう。また、シードプランニングによると、2011年のタブレット端末の販売台数は260万台となっており、電子書籍市場の規模に関しても、MM総研は2015年に3501億円と予想しているなど、調査を行う企業によって大きな開きがある。
情報が錯綜し、さまざまな憶測が飛び交う電子書籍市場。過去にも電子書籍元年と言われては頓挫してきた歴史があるため、今後の展望が見えづらい市場と言えるためであろう。2010年に産声を上げた何度目かの電子書籍市場は、今度こそ軌道に乗り、拡大、市場を維持することが出来るのであろうか。動きが活発化し出した今年が、行く末を左右する重要な年と言えるのかもしれない。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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