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ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:第8回:採用選考プロセスの組み立て方(2)
前回に引き続き、採用活動にあたっての選考プロセスの組み立て方について、考慮しておきたいポイントをお伝えします。
■適性検査や筆記テストの使い方
選考に筆記テストや適性検査を利用している企業は多いと思います。新卒採用での利用が一般的ですが、最近は中途採用でも実施する企業、実施したいと考える企業が増えているようです。いろいろな面で企業に余力が少ない時期ですから、人を雇うからにはできるだけ判断材料を集めて慎重を期したいという表れだと思います。
私は今までいくつかの適性テストを利用したことがありますが、それぞれ一長一短はあっても、面接だけではなかなか見極め切れない内面的な部分を見る上で、参考になる情報は十分得られましたし、入社後にテスト結果を見直してみて、「なるほど、これはこういう意味だったか」「この部分はこういう場面で出てくるのか」などという発見もありました。うまく活用すればミスマッチ解消につながりますし、間違いなく有用なツールだと思います。
テストの使い方にあたって、一つだけお勧めしておきたいのは、「一度利用を決めたら、一定期間はあまり浮気せずに使い続ける」ということです。
適性検査や筆記テストに関しては、多くの業者から様々な用途のテストが提供されており、基礎能力や性格特性、職務適性ばかりでなく、組織への定着性や価値観など、目に見えない部分が数値化された指標で示されます。指標とする項目の観点、グラフや帳票の見せ方、コメント文章の表現ニュアンスなど、それぞれ特徴や個性がありますが、ある程度名の知れたテストであれば、示される情報量や結果の信頼性に関してはほぼ問題ないと思います。
違いとして感じるのは、やはり評価シートなど結果の表現の仕方です。例えばコメントの表現が、言葉足らずに感じたり、極端で乱暴な表現に見えたり、ということがあります。グラフなどの見方についても、自分が気になる項目を選択的に見てしまったり、その項目名のイメージから、読み取れる内容を自分勝手に解釈してしまったり、なかなか捉えづらい感じがします。
しかし、テスト結果を見ながら面接の数をこなしていくと、自分の感覚とテスト結果のすり合わせができるようになってきます。事例を積み重ねることでテスト結果の読み取り能力が上がっていきます。
テスト結果をきちんと読み取れるようになるには、慣れも重要だということです。
ですから適性検査に関しては、明らかな不都合があったり積極的に変えなければならない理由があるということでなければ、一定期間は継続して同じものを利用することをお勧めします。単に「わかりづらい」とか「見にくい」といった理由ですぐに変えてしまうと、変えたものでもたぶん同じように感じます。自社で用意するような筆記テストでも、基本的には同じことです。
これは同じまま使い続けろということではなく、過去との継続性を考えながら改訂していくということです。適性検査サービスの業者も同じような考え方でテスト品質を上げようとしているはずです。
逆に全面改訂などといって、今までの内容をまったく変えてしまうような業者のサービスは、何かよほど変えざるを得ない理由(品質や結果精度などに問題?)がある証拠なので、あまり使わない方が良いように思います。
■選考途中の関係作りも重要なステップ
説明会、テスト、面接という基本的なステップとともに、選考中の連絡のやり取りなど、直接の選考ではない接点も、選考プロセスの中では重要な部分です。会社と応募者との間では、お互いの接点すべてがお互いの判断材料となります。会社の接し方一つで、応募者の志望度合いは高まったり冷めたりしますし、会社側から見ても、「面接での印象が明るくハキハキ好印象だったのに、電話で話したら別人のようだった」など、お互いの人となり、会社なりを知るには重要なステップです。会社としては、この部分の接し方には十分注意し、自分たちの判断材料を増やすためにも、相手に対してアンテナを張る必要があります。
私が経験した例ですが、ある会社の社長さんがとても人なつっこい方で、面接した学生さんと思いのほか打ち解けたらしいのですが、その後、その学生さんは選考を辞退してしまいました。はっきり理由は聞き出せませんでしたが、どうも面接以降のやり取りがあまりにもなれなれしく感じたらしく、仕事でもけじめのない雰囲気があるのではないかと思ってしまったようです。社長さんは持ち前の性格で親しみの表現として接していたのですが、相手にはなれなれしく映ってしまったようで、もしも相手の立場や考え方、態度についてもう少しアンテナが張れていたなら、違う結果になったかもしれません。
これは社長さんとの相性の悪さが早めにわかったとも言え、一概に悪いことではないのですが、もしもこの学生さんが会社として欲しい人材であったとしたら、経営者個人の性格で会社全体が嫌われてしまったわけですから、あまりよろしいことではありません。
これほど極端ではなくても、連絡すると今までは即レスだった人が、急に反応が悪くなったと思ったらやっぱり辞退だった、などというようなことは良くあるでしょうし、やり取りしている中で、応募者の人物評価にかかわるような事象があったりもするでしょう。人の気持ちは状況によって移り変わりますし、ちょっとしたやり取りがこの気持ちに影響することは多々あります。また選考を進める上での補足情報、事前情報はこんな中から得られることが多いものです。
応募者と接する上での距離感として、私はよく自分の部下に、「ホテルマンのサービスと同じ」と言っていました。
礼節を保ち、必要以上に立ち入らず、かといって放置せず、暖かく、かといってベタベタするわけでなく、相手の状況や求めている物を察知し、それに向けてベストな対応をするというようなことです。これを意識することで、状況把握が早めにできるようになり、補足情報も集めやすくなります。万人にとっては一番受け入れやすい接し方ではないかと思っています。
相手との接し方や距離感をどうすべきか、こんなことも意識しながら、選考途中の関係づくりをうまく進められると良いですね。
■選考中は必ず週一回以上の接点を!(音信を途絶えさせない)
最後に留意点を一つだけ。
選考プロセスの中では、来社して選考を受けてもらう、書類や資料を提出してもらう、そのための連絡を取り合う、といったことを繰り返します。この頻度について、確実に言えるのは「間隔が空くことで良いことは一つもない」という事です。
最近は中小企業でもたくさんの応募があって、なかなか対応が追い付かないケースもあるようです。皆さん忙しいのでしょうが、「来月頃に連絡します」などと先延ばししたり、「合格者だけ連絡します」と手間を惜しんだり、相手によって対応が違ったり、どうも会社側の“上から目線”の対応が増えているように感じます。
採用活動は「会社と応募者のお見合い」と言えますが、お見合いの日時を一方的に決められたり、いつまで経っても返事が無かったり、必要最低限の事しか連絡してこないような相手だったとしたら、そんな人と付き合って結婚したいと思うでしょうか。やっぱり些細な事でもマメに連絡してくれ、自分のことを知ろうとしてくれる相手、そう考えていることが伝わってくるような相手が良いはずです。選考期間中は会社と応募者の交際期間です。その間の“定期的な音信”はとても大切です。
私は“週一回以上”と書きましたが、これはそんなに難しいことではありません。
例えば、
説明会に来てもらう → 参加お礼のメール → 次回の選考連絡 → 返信をもらう
→ 選考予定の確認 → 選考への来社 → 来社お礼のメール → 次回の連絡・・・
こんな流れをメールのやり取りを中心に、たまに電話も利用して行えば、週一回では足りなくなるほどです。大した内容もないご機嫌伺いのようなメールでも、応募した会社からもらえれば印象に残って意外にうれしいものです。
「連絡の手間を惜しまないこと」は、選考プロセスの中では重要なポイントの一つです。面倒とか苦手とか言わず、是非取り組んでみて下さい。応募者の反応の変化が感じられるはずです。
次回は、面接を実施する際の注意点について、お伝えしようと思います。
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