米国NY商品取引所の金先物取引の証拠金引き上げ、なぜ取引規制が強化されたのか?=浅妻昭治

2011年8月15日 14:58

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

何か訝しい。米国ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物取引の証拠金引き上げである。この規制強化で連日、史上最高値を更新し、1トロイオンス=1817.6ドルまで買い進まれた金先物価格は、先週末に1751.5ドルと急落して引けた。

何か訝しい。米国ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物取引の証拠金引き上げである。この規制強化で連日、史上最高値を更新し、1トロイオンス=1817.6ドルまで買い進まれた金先物価格は、先週末に1751.5ドルと急落して引けた。[写真拡大]

【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】

  何か訝しい。米国ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物取引の証拠金引き上げである。この規制強化で連日、史上最高値を更新し、1トロイオンス=1817.6ドルまで買い進まれた金先物価格は、先週末に1751.5ドルと急落して引けた。最高値更新は、欧州の債務危機、米国国債の格下げ、米景気の二番底懸念、ドル安などを背景に「質への逃避」、「無国籍通貨」として金選好を強めたことが要因で、確かに上昇ピッチの速さはバブル的である。しかし、このバブルは、不動産バブルや商品市況の原油、穀物などのバブルとは趣きを異にしているはずだからである。

  日本の不動産バブルは、地価の急騰が、勤労者の住宅取得を困窮化させ、世論のブーイングに尻を叩かれて、時の自民党政権は、地価沈静化の不動産融資総量規制の発動に追い込まれた。原油価格の高騰も、ガソリン価格が上昇し消費者の購買力を奪い、今回の米景気減速の一要因となり、穀物価格の高騰も、世界の飢餓人口を悪化させる弊害を生むことは記憶に新しいところである。

  しかし、こと金価格に関しては、急騰しようが急落しようが、金兌換はすでに、ちょうど40年も前のきょう8月15日の「ニクソン・ショック」で停止されているから、実体経済への影響は無視できるほどに小さく、すべては市場参加者間、自己責任の範囲内にとどまる。

  にもかかわらず、なぜ取引規制が強化されたのか?察するところ、これは欧州の債務不安、銀行株安、米景気減速の裏返しに違いない。欧州の銀行株安が、金融危機再燃の引き金になるとして、株安阻止の空売り規制が発動され、もう一方では、マネーの逃避先の金価格の急騰に歯止めをかける取引規制の強化につながったと推測されるのである。

  もしこの推測が当たっているとすれば、世界各国の政策当局者は、揃いも揃って財政政策にしろ金融政策にしろ危機脱出策の手詰まりに陥っていて、残された「ラストリゾート(最後の拠り所)」として直接、マーケットに手を突っ込む市場介入策に踏み切ったとも解釈されることになる。株価に関しても、すでに日銀が、ETF、REITを市場購入しているが、今後は、株式市場に直接、「真水(カネ)」を注入する「真水相場」がないとは言い切れないのである。(続きと詳細は「浅妻昭治のマーケットセンサー:メールマガジン」に掲載。果たして注目銘柄は?)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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