NYタイムズが日本の「国債ランク下落」「世界第2位陥落」を詳報

2011年2月19日 20:08

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

先月から今月にかけて、日本経済を巡る重要な「指標」と「数値」が相次いで発表された。一つは、1月27日、米国の格付け機関スタンダード&プアーズ(S&P)が発表した日本国債のAAからマイナスAAへのランクダウン。

先月から今月にかけて、日本経済を巡る重要な「指標」と「数値」が相次いで発表された。一つは、1月27日、米国の格付け機関スタンダード&プアーズ(S&P)が発表した日本国債のAAからマイナスAAへのランクダウン。[写真拡大]

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■アメリカの世論はどう見ているのか?

  先月から今月にかけて、日本経済を巡る重要な「指標」と「数値」が相次いで発表された。一つは、1月27日、米国の格付け機関スタンダード&プアーズ(S&P)が発表した日本国債のAAからマイナスAAへのランクダウン。今一つは2月14日、内閣府が発表した2010年度のGDPの速報値で、それによれば41年に亘って守り続けた「経済力世界第2位」からの陥落であった。日本国内では「少子・高齢化問題や巨額の公的債務を抱え、今後、経済はますます衰退するのではないか」との『悲観論』が出る一方、中国や韓国等アジア諸国からは、「日本は技術力と投資力で必ず復活する」と、『期待論』と『警戒論』の織り混ざった見方が出されている。では、アメリカの世論はこれらの事態をどう見ているのだろうか。2月13日付の「ニューヨークタイムズ」紙は、次のような記事を載せている。

■2010年、中国は日本に取って代わって世界第2位の経済大国になった

  日本政府はこのほど、直近4半期の経済数値を発表したが、それによると、日本のGDPは10月から12月間の4半期に0.3パーセント下がった。これは、エコポイントが終了した結果によるものだという見方があるが、年間を通じては、1.1%の減少で、GDPの総額は5.47兆ドルで、これに対して中国は5.88兆ドル。こうして昨年の夏に中国が日本の経済を追い抜いた。因みに5年前は、中国の経済規模は日本の経済規模の半分の2.3兆ドルだった。

  この20年間は日本の経済や政治が衰えてきた。この40年間、日本はアメリカに次ぐ経済大国であり続けた。1980年代は、日本がアメリカを追い抜くのではないかとの声もあったのにだ。日本の経済は今や成熟し老年化してきているのに対し、中国はこれから本格的な工業化や都市化を迎えようとしている。ただ、まだ中国の一人当たりの収入3600ドル台で、アメリカや日本の10分1以下である。

  しかし、中国の急成長によって日本の経済が恩恵を受けている部分もある。これまではコストダウンのために中国に進出していたが、これからは中国の経済発展によって日本の商品が大いに売れるという、市場環境の改善も見込まれる。

  この四半期では日本の経済は良い結果が出なかったが、2009に比べて2010年は3.9%の成長が見込まれる。世界経済危機から抜け出すきっかけとみることができる。事実、先月、日本政府が発表した今後の経済影響調査では、中国や他のアジアの新興国の需要が増大するため、輸出と生産量が増えるとの見方を示している。

  経済担当大臣である与謝野馨氏も、これらのデータ発表の際に、記者団に対し『厳しい経済環境はまだ続くが、海外経済の振興や政府の政策の効果によってこれからは日本経済の回復も見込まれる』と語っている。

■「株価には影響なし」と論評

  一方、日本銀行は月曜日から始まった2日にわたる政策会議で、金融緩和政策ためにはあらゆる措置を取ることを確認したが、全体的にはその効果は限定的なものであった。

  昨年10月から12月の四半期では、前年に比べて個人消費が0.7%下がった。これはエコカー減税終了(9月)の結果である。10月にはタバコ税増税が消費減少に影響した。輸出入は15年振りの円高で影響を受け、輸出競争力が弱まった。7月から9月には1.5%のペースで落ちていたが、前四半期に比べて資本投資は0.9%増加した。

  格付け機関S&Pによる信用ランキング発表の2週間後に、前述のニュースが届いた。評価は日本の長期国債をAAからマイナスAA(最上位から3番目のランク)への変更で、2002年以降初めてのS&Pによる日本国債のダウン評価である。

  もう一つの有力な格付け機関であるムーディは、日本国債の評価をAA2(3番目に高いランク)で維持した。しかし、財政改革等が成功しない限りはこれより評価が下がることもあり得る。

  今年、日本の負債はGDPの204%に達する。これは、OECDのデータによると『借金まみれ』のギリシアを越えてしまう。

  S&Pは日本国債をダウン評価した理由を次のように述べている。「日本政府は膨張する財政赤字を改善するためのしっかりした戦略を持っていないと共に、経済危機以前に予測されていた以上に財政負担は高まっている。高齢化社会の到来は更にその圧力を増やし、社会保障や年金の負担が増大する」。

  今後5年間は日本国債の発行が増大し続けると見ているS&Pは、更に次のように述べる。『日本政府が今後有効な政策を取らない限り、2020年前までは財政バランスの改善を果たすことは出来ないであろう』。

  だが、日本のGDP数値は証券市場には影響を与えなかった。日経平均は月曜日の前場では0.8パーセント上昇した。そして、マーケットは金曜日でも祝日のため閉まっていた。

  細かい数字を丁寧に紹介し、日本経済の実態と不振の原因に迫ろうとしている。格付け機関の評価についても、ライバル会社のそれ載せる等、さすがにバランスの取れた記事内容だ。『中国経済の発展は、日本経済にも大いにプラスになる筈』との論調は、アジア諸国の経済人にも共通する考えだ。『面子(メンツ)』を気にしがちな日本人には参考になる言だが、『2位陥落は株価には影響しなかった』は的確な観察である。また、『金曜日にもかかわらず、祝日と称して市場を閉鎖してしまった』と皮肉られたが、市場関係者の間では『陥落ショック』は想定内のことだったのかもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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