永田町の『政治ごっこ』に業を煮やしてか?白川日銀総裁の『大講演』!

2011年2月13日 23:01

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

9日、菅内閣発足以来始めての「党首討論」が行われたが、政策論議としての内容は極めて乏しいものであった。焦点の一つは、民主党が先の総選挙で掲げて政権交代を成したマニフェストの是非で、自民党の谷垣総裁は「公約の実現はムダの排除と予算の組替えで出来ると述べてあり、消費税増税とは一言も書いてない。

9日、菅内閣発足以来始めての「党首討論」が行われたが、政策論議としての内容は極めて乏しいものであった。焦点の一つは、民主党が先の総選挙で掲げて政権交代を成したマニフェストの是非で、自民党の谷垣総裁は「公約の実現はムダの排除と予算の組替えで出来ると述べてあり、消費税増税とは一言も書いてない。[写真拡大]

【「霞ヶ関発・兜町着」直行便】

  9日、菅内閣発足以来始めての「党首討論」が行われたが、政策論議としての内容は極めて乏しいものであった。焦点の一つは、民主党が先の総選挙で掲げて政権交代を成したマニフェストの是非で、自民党の谷垣総裁は「公約の実現はムダの排除と予算の組替えで出来ると述べてあり、消費税増税とは一言も書いてない。公約違反だから解散総選挙で国民に信を問え」と迫った。

  それに対し菅首相は、「公約は国民から託された4年の任期中に実現させる。消費税については検討すると昨年の参院選のマニフェストで触れている。解散総選挙をいま行なえば、次の政局は不透明になり、永年の重要課題を先送りする事になる」と政権延命に必死。

  もう一つ焦点となった「社会保障と税の一体改革」についても、自民、公明両党は「早く民主党案を出せ」と迫るが、菅首相は「与党と政府は一体だから、政府案として提案するから協議に加わってくれ」というばかり。政府の腹は、政府案を与野党で協議して成案を得ることにある。

  社会保障、税そして財政再建という3つの重要政策で合意がなれば、これは事実上「大連立」が出来たも同じ。現政権は安泰というわけだ。そうはさせじと、自民は何が何でも争点を際立たせて解散総選挙に追い込み、政権奪還を計らおうという戦略で、どちらも手前勝手な考えだ。問題はいまわが国が最も考えなければならない政策は何かという事だ。社会保障、財政再建そしてそのための財源確保、税制改革も必要だろう。

  だがそれ以上に重要な政策があるのではないだろうか。成長戦略である。我々は営みを続ける限り、現出する課題、矛盾等を解決し前に進まなければならない。「時間」と同じように進むことによってしか「解」は得られないのだ。もちろん、量的、物質的な成長だけが成長のすべてではないが、経済的な成長が多くの課題を解決してくれる事は自明である。

  だが、そのような重要な政策について、何も、首相も経済閣僚も語ろうとしない。そんな時、白川日銀総裁が日本外国特派員協会で講演を行なった。タイトルは「日本経済の復活に向けて」。内容は、

 (1)なぜ、日本経済は活力を失ったのか  (2)なぜ、長期に亘ってデフレが続いているのか  (3)日本の財政は維持可能か  (4)日本経済は本当に復活可能か

  どの項目も、経済人のみならず多くの国民が最大の関心を抱いているテーマであるが、ここでは4番目の「日本経済の復活」についての部分を紹介する。

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  日本経済の成長力を引き上げるための取り組みとして、私が特に重要と考えている点を3つ挙げたいと思います。 第1に、急速な高齢化の問題に取り組んでいくことです。現在の人口動態を前提にすると、生産年齢人口の減少ペースは、先行き加速します。それだけに、労働参加率の引上げ、とりわけ高齢者や国際的にみて低い水準に止まっている女性の労働参加率がもっと上昇するような環境作りが社会全体として求められます。

  第2に、経済全体の生産性の伸び率を高めることが必要です。勿論、これまでも日本企業は、ジャスト・イン・タイムと呼ばれる徹底した生産・在庫管理や英語にもなっている「カイゼン」の取り組みに代表されるような、生産性向上に向けた取り組みをひたむきに続けてきました。バブル崩壊後は人件費の圧縮にも努めてきました。個々の企業単位でみると、オペレーション上の効率性の追求は重要ですが、グローバルな競争が激しくなる下では、こうした努力だけで生産性が向上する訳ではありません。かつて、日本のウォークマンが世界の市場を席捲したのは、製品としての完成度の高さに加え、幅広い世代に対し、音楽を屋外で聞くという新たなライフスタイルを提案したからです。日本の企業には、製品自体の機能や性能を高める「モノづくり」の視点に加え、製品の利用場面を含めた新しい価値を提供するという「仕掛けづくり」の視点がこれまで以上に求められています。

  このように、企業には、常に消費者の潜在的なニーズを掘り起こし、新たな付加価値を創造していく取り組みが必要になっています。経済全体の生産性向上という点では、こうした企業単位の努力だけでは十分ではありません。経済全体の新陳代謝を高めること、すなわち、資本や労働といった生産要素がニーズの低下した分野から高まっている分野に円滑に移動することを妨げないようにすることも極めて重要です。さらに、成長著しい海外市場の需要を積極的に取り込んでいく努力も重要であり、最近では、どの企業も、特にアジア市場の需要の取り込みに腐心しています。中国を始めとする東アジア諸国は、中間所得層の拡大とともに、消費需要が爆発的に増加しています。同時に、これらの国々では、高成長の裏側で、かつて日本が経験した公害問題や都市の過密問題が生じており、そこにも、日本企業が長年培ってきた技術力やノウハウを活かす大きなチャンスがあります。こうした海外の需要を実際に取り込んでいくためには、開かれた貿易体制を整備していくことも必要です。政府は、昨年、FTAやEPA交渉を加速する方針を打ち出しましたが、こうした議論の今後の展開も、日本経済の生産性向上にとって重要なポイントになります。規制緩和、税制改革、市場開放を始め、政府の果たすべき役割は大きいものがあります。

  第3に、財政バランスの改善に向けた取り組みも必要です。財政状況の悪化は、現役世代を中心に将来の所得増加期待を低下させ、支出を抑制する要因になります。また、昨年来の欧州周縁国のソブリン・リスク問題にみられるように、財政の維持可能性に対する信認が低下すると、財政と金融システム、実体経済の三者の間で負の相乗作用が生じ、経済活動にも悪影響が及びます。財政バランスの改善は、インフレによって達成される課題ではありません。確かに、物価が上昇すれば、税収は増加するかもしれませんが、同時に、社会保障費や公共工事費をはじめ歳出も増加します。物価の上昇が長期金利に織り込まれれば、国債の利払い負担も増加します。財政バランスの改善は、実質的に歳出を減らし、歳入を増やす努力なしには実現しないことを十分に認識する必要があります。

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  成長に欠かせない「科学研究」や「技術革新」の部分が欠落しているように思えるが、その分、「財政バランスの改善」を成長要素としたところは、金融界からの情報発信といえよう。いずれにしても、戦略課題に対する政府の体たらくを見かねて、敢えて『買って出た』白川総裁の勇気に拍手を贈りたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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