神戸製鋼所の北米での自動車用ハイテンの展開=犬丸正寛の見聞記

2010年12月3日 19:23

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

GM(ゼネラル・モーターズ)の再上場で元気の出てきたアメリカの自動車産業。絶好ともいえるタイミングで神戸製鋼所<5406>(東1)が、自動車用の高級鋼板を引っさげて、北米事業をさらに強化する。2日、東京の鉄鋼会館で開かれた、「北米における自動車用鋼板事業の新プロジェクト」発表の会見に出てきた。

GM(ゼネラル・モーターズ)の再上場で元気の出てきたアメリカの自動車産業。絶好ともいえるタイミングで神戸製鋼所<5406>(東1)が、自動車用の高級鋼板を引っさげて、北米事業をさらに強化する。2日、東京の鉄鋼会館で開かれた、「北米における自動車用鋼板事業の新プロジェクト」発表の会見に出てきた。[写真拡大]

■軽くて強い自動車用鋼板。米自動車メーカー採用の効果絶大

  GM(ゼネラル・モーターズ)の再上場で元気の出てきたアメリカの自動車産業。絶好ともいえるタイミングで神戸製鋼所 <5406> が、自動車用の高級鋼板を引っさげて、北米事業をさらに強化する。2日、東京の鉄鋼会館で開かれた、「北米における自動車用鋼板事業の新プロジェクト」発表の会見に出てきた。

  山口育廣副社長の概要説明は次のとおりだ。「北米における自動車用冷延ハイテンの需要増に対応するため、米国USS社との合弁拠点プロテックコーテーティング社に、自動車用冷延ハイテンの連続焼鈍設備を約4億米ドルを投じて2011年初頭に建設着工する。2013年初頭に稼動の予定。年間約50万ショートトンの能力」という。

  難しい専門用語が続く。「ショートトン」は、重さの単位トン(t)。日本の1tに対し、アメリカでは0.9tと、やや、小さい(ショート)。「ハイテン」とは、高張力鋼板のことで、1ミリ平方メートルの鋼板を引っ張った場合、どれだけの力に耐えることができるか。通常、使われている鋼板は、「引っ張る力が20~30キログラムで切れる。これに対し、ハイテンは60キロと通常の2倍から3倍の強さがある。さらに、引っ張り強度150キロのハイテンも開発済み」(広報室)ということだ。

  価格については、未公表ながら、当然、普通鋼板に比べれば高いはず。強度比較並みの2、3倍ですかと聞くと、「そこまでは。でも、高いことは間違い」とのことだ。

  なぜ、自動車用に普通の鋼板に代わろうとしているのか。アメリカの自動車には、「CO2削減」と、「安全対策面」の2つのニーズが求められている。車を軽くすれば、CO2削減には貢献する。しかし、強度を増すために鉄の板を厚くすれば、車重が増えて、CO2削減に逆行する。悩ましい、2つのニーズを解決できるのが、「軽くて強いハイテン」というわけだ。この、ハイテン技術では神戸製鋼が世界的で、USSも認めて今回の締結となった。

  ただ、ハイテンの鋼板はUSSが、合弁会社のプロテック社(オハイオ州)へ供給する。材料供給面での神戸製鋼のメリットはない。プロテック社は1990年の設立で、溶融メッキ鋼板を中心に生産し、利益も出ているという。今後、アメリカの自動車メーカー向けにハイテンの売上が増えれば、合弁会社からの配当金が見込まれる。  さらに、もっと大きい効果として、会見の中で感じたことがある。自動車の本場アメリカで冷延ハイテンがビッグ3などに採用されることで、ヨーロッパ、アジア、とくに日本の自動車メーカーで、「それならば」と、採用が見込まれるという狙いが込められている思われることだ。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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