素材メーカー ニットダウンで攻勢

2010年10月25日 09:39

印刷

記事提供元:日本繊維新聞

 合繊メーカーや商社、染色メーカーがニットダウンの販促に力を入れている。ダウンウェアの表地をニットで商品化。軽量極薄織物使いでは得られないニットダウンの着用快適性を打ち出し、秋冬のマストアイテムとして浸透させようとする取り組みが活発化している。

 これまではナイロンやポリエステルの軽量極薄織物が使われていた表地をニットで商品化したニットダウンが秋冬の売れ筋として注目されている。

 東レが東レインターナショナル(TI)と連携し、表地を合繊ニット「アクトウィンド」で商品化したニットダウンを商品化。09年秋冬から「シンセティックマジック」ブランドによる製品OEM(相手先ブランド生産)を立ち上げた。

 ユニチカトレーディング(UTC)では婦人服地部隊がニットダウン向けのテキスタイル販売を09年秋冬からスタート。

 伊藤忠商事では北陸テキスタイル課が10年秋冬からニットダウンの製品OEMに着手。クラレトレーディング、小松精練は11年秋冬からTXの販売を本格化させる。

 軽くて暖かいのがダウンウェアのセールスポイント。これまでは、表地に使われる織物を軽く仕上げるための細デニール糸の開発競争や羽毛の高度化が進められてきた。

 軽量極薄織物に使われる細デニール糸はこの1ー2年で10Dや15Dクラスに一気に進化。生地の目付けで20㌘/平方㍍台の商材が登場するなど、究極ともいえる領域にまで開発は進んでいる。

 一方、ニットダウンの場合、今のところ50D近辺による丸編みが主流のため、表地そのものはそれほど軽いわけではないものの、ニットのストレッチ性が優れた運動追随性を発揮するため、着心地は極めて軽く快適なものに仕上げられている。

 東レ、TIは当時、誰も取り組んでこなかったというダウンウェアの着用快適性向上を目指し、表地を「アクトウィンド」で商品化したニットダウンの開発に着手。ほぼ2年をかけた共同開発で「シンセティックマジック」を完成させた。

 09年秋冬から投入し1万5000枚(上代ベースで7億円弱)を販売。10年秋冬では5万枚(18億円弱)の販売を計画しており、今シーズンはゴルフブランドでの採用が相次いでいるという。

 11年秋冬に向けては、さらに軽量化を目指した表地、製品の開発を強化するとともに、トップゾーンにとどまる販路を「もう少し下のゾーンにも広げる」ため、「アクトウィンド」合理化版の開発を急ぐ。

 UTCは杢調「ラインスター」を主力にTXで展開しており、09年秋冬のテストセールを経て、10年秋冬では3500反を投入。EUの高級メゾンにも採用された。

 11年春夏では、ミラノコレクションに出展するメゾンが「ラインスター」を採用。現在は1万反への拡販を目指し、国内外で11年秋冬商戦に臨んでいる。

 伊藤忠商事は10年秋冬から製品OEMでニットダウンに参入。特殊構造のダウンパックなどに工夫を凝らし、伸縮性を有する素材ならば天然繊維やローゲージをも表地に使うことのできるニットダウンを商品化した。

 小松精練は8月下旬に大阪では初めてとなるスポーツ素材展を開催。目玉素材として、ニットダウン狙いの新素材「エアシャットV」を出展した。

 コーティングとラミネートとの中間的な手法で表地に張り付けられた独自開発の薄膜が有する透湿防風性能が特徴。10D、20D、30Dといった細デニール糸を導入しニット、織物による商品ライン拡充を進めており、11年秋冬からTXでの販売を立ち上げる。

 クラレトレーディングは上品な杢調が特徴の「ソリビア」をニットダウン向けに投入。カットソーをターゲットに企画した50D使いのスムースがEUメゾンやEUスポーツアパレルに採用され、11年秋冬から店頭にお目見えする。


日本繊維新聞では、繊維・アパレル・ファッション業界の情報を速報でお届けしています。繊維・アパレル・ファッションに関連するイベント・コレクション・セミナー情報、リンク集も。

関連記事