「馬が水を飲む」か強弱感拮抗の逆日歩5銘柄で期間限定=浅妻昭治

2010年10月12日 11:48

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

「馬を水辺まで連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」という欧米流の諺がある。いかに水辺で回りから馬を煽り立てても、馬に水を飲む意思がなければ、馬は目の前の水に首を伸ばすことはないという意味である。

「馬を水辺まで連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」という欧米流の諺がある。いかに水辺で回りから馬を煽り立てても、馬に水を飲む意思がなければ、馬は目の前の水に首を伸ばすことはないという意味である。[写真拡大]

【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】

■投資家限定のトライアルも

  「馬を水辺まで連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」という欧米流の諺がある。いかに水辺で回りから馬を煽り立てても、馬に水を飲む意思がなければ、馬は目の前の水に首を伸ばすことはないという意味である。

  日本銀行が、5年ぶり3回目の復活をさせたゼロ金利政策は、どうもこの「馬と水」に例えられそうだ。ゼロ金利政策は、敢えて円の価値(金利)を引き下げて、資金を潤沢に市場に供給し、円買いから円売りへの転換、デフレ・マインドからの脱却、設備投資の拡大、リスク資産への投資などを喚起することを政策目標としている。5年ぶり3回目の復活で「馬を水辺まで連れて行く」政策環境は整ったことになる。

  しかし、「3度目の正直」で「馬」(為替投機筋、消費者、企業、投資家)が目出度く「水」を飲んでくれるのか、それとも「2度ダメだったものは3度目もダメ」で「水」にはまったく見向きもしないのかは、じっくり「馬」に聞いてみるしか方法はないのである。

  もともとこのゼロ金利政策は、初導入された1999年当時から評判は芳しくなかった。それでなくても低水準だった預金金利がさらに引き下げられて、受け取る利息は「銀行に預金を下ろしに行くバス代にもならない」とマイナス効果にブーイングの声の方が大きかった。預金者が逸失した利息収入は結局、大手銀行の不良債権の処理に消え、ゼロ金利政策が「銀行救済策」と冷たく突き放される始末であった。

  それ以来、デフレ・マインドからの脱却は、道半ばというよりさらに後退している可能性の方が強い。なかなか浮揚感には遠い景気実感に高失業率、孤独死、無縁社会化などの暗いニュースが続く世相、いまだに消費税引き上げの旗を降ろしていない菅連立内閣の迷走など、自ずと身構えてサイフの紐を締めざるを得ず、生活防衛意識、節約志向は高まりこそすれ低下することは想定し難い。資産運用面でも「デフレはカネ、インフレはモノ」の投資セオリーが有効で、キャッシュ・ポジションを高める方向に動き、タンス預金が増えることになる。いくら日銀が、ゼロ金利政策を3回も繰り返しても、デフレ・マインドが払拭されない限り、「失われた20年」にまで延びた「失われた10年」が、さらに「失われた30年」に深刻化するとの懸念は尽きないことになる。

  その上に今回は、政策の最大の目玉の円高阻止効果が、大きく毀損されてしまった。各国が「近隣窮乏化政策」を続けるいわゆる「通貨安戦争」を仕掛けるなかで、米連邦準備理事会(FRB)が、11月2-3日開催のFOMC(公開市場委員会)で、日銀を上回る追加金融緩和策を発動するのではないかとする警戒感や、為替市場介入への先進各国の牽制などから、日本が、再度の単独介入を政治決断できないと見透かされて、為替レートは、逆に9月15日の政府・日銀の為替単独売り介入前の高値を上抜き、1ドル=81円台まで円高となった。10月中旬から始まる3月期決算会社の決算発表が、増益・減益、上方修正・下方修正のどちらに転ぶか、雲行きは怪しく予断を許さない。

  秋相場が本番を迎えるなかで、こうした弱気材料を並び立てるのは気が引ける。『易経』でいうところの「陰が極まれば陽に転ずる」を祈るや切である。しかし、国際会議の相次ぐ11月のFOMCまでは、厄介な相場展開が続くネガティブ・シナリオを覚悟しておく方が無難である。「水(株式)」を飲む(買う)「馬(投資家)」不足が懸念されるからだ。こうした買い手不足相場では、超目先的には需給主導銘柄が大きく強弱感を対立させ急動意となる展開もたびたび繰り返される。株不足で逆日歩がつく銘柄が、買い方の攻勢で、売り方に強制的に買い戻しを迫ることも想定されるのである。売り方が「馬」として登場して「水を飲む」ことになる。

  ツルハホールディングス <3391> 、いすゞ自動車 <7202> 、ガリバーインターナショナル <7599> 、サンリオ <8136> 、吉野家ホールディングス <9861> の逆日歩5銘柄は、11月のFOMCまで期間限定、腕に覚えの投資家限定で売り残、買い残の動向から目を離せないことになる。(情報提供:日本インタビュ新聞社 Media-IR)

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