ファンケル創業者:池森賢二氏の企業継続策どう捉えるべきか

2020年3月8日 16:57

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 ファンケルはネット通販を主体に、「無添加化粧品」「サプリメント」「健康食品」の製販を手掛ける。そんなファンケルが、再成長過程を確かなものにした。営業利益動向が、それを如実に物語っている。

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 2016年3月期は「70%の(営業)減益」に陥った。だが以降「86.4%の増益」「376%の増益(15年3月期の倍超の利益を計上)」「46.6%の増益」、そして今期も「21%の増益」計画。4-12月の通期計画比進捗率は83%。上振れが期待できる状態だ。

 ファンケルの今日を考えるとき、創業者:池森賢二氏(現、名誉相談役ファウンダー)の慧眼に惹かれる。池森氏は小田原瓦斯を退職後73年にファンケルを設立しているが、1970年代に「化粧品公害」と世の中が騒然とした時期がある。化粧品による女性の肌トラブルの続出である。

各社、対応策に取り組んだ。防腐剤(パラベン)をはじめとする添加物にその原因があることは明白だったからだ。が、ファンケルの取り組みは一歩・二歩先行していた。5ccの小さな容器を考案し「無添加の化粧品が傷まないうちに使い切るように」という施策を執ったのである。池森氏の発案だった。

ファンケルに通じたアナリストは「16年3月期の大幅減益から回復しえたのも、池森氏の存在が大きい。代表取締役会長に復帰(13年6月)し、不採算部門の撤退など徹底した構造改革に取り組んだ」とする。

 そんなファンケルが、「顧客別に受注し生産する、パーソナルサプリメントを2月から発売する」と発表した。こんな枠組みだという。

★Webアンケートで、食生活や生活習慣に関する45の質問を行う。

★栄養素の充足度を把握するため尿検査を行う。

★そのうえで個々に最適なサプリメントを、自社工場で生産し1カ月に1回30日分を個別包装して定期的に販売する。

 1月15日に都内で行った発表会には池森氏が登壇。「お客さまごとの悩みに寄り添ったサプリメントは、94年の(サプリメント事業)開始以来ずっと提供したいと思い続けてきた課題。ようやく実現に至った」と語ったという。

 ところでファンケルの発行済み株式の30.2%に相当する筆頭大株主に、キリンホールディングスが昨年8月に登場している。

 池森氏はこう語っている。「私も82歳。日本人男性の平均寿命を超えた。親族に承継者はいない。私がいなくなったらと考えた時、ファンケルの独立性を尊重してくれる大手企業の傘下に入るのが企業継続と社員のためと判断した。品位・行儀が伴った企業であるキリンホールディングスの磯崎功典社長に、率直に話し快諾を得た。創業者一族の保有株式の33%を譲受してもらった。自分一人の判断でやった。社員には事後に話した。皆が受け入れてくれた」。

 創業者で実質トップの判断として、それなりの評価はできる。が、企業ましてや上場企業のトップとしては「後継者の育成」もまた「責務」とも思えるが如何に。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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