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45億年前の月は現在よりも水に富んだ世界だった ウェスタンオンタリオ大らの研究
今回分析された月の隕石。(画像: ウェスタンオンタリオ大学の発表資料より。Tara Hayden photo)[写真拡大]
アポロ宇宙船が月の石を持ち帰ったのは20世紀のことだ。この月の石は、現在でも分析研究が続けられているが、月の標本としての価値は月全体の5%程度の状態を反映しているに過ぎないと考えられている。
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月に対する理解をさらに深め、正確性を増していくためには、別のサンプルを取得し、より多くの事例で検証していく必要がある。月から新たにサンプルを持ち帰るのは容易ではないが、近い将来アルテミス計画でそれが実現できるだろう。だがそれを前にして、ウェスタンオンタリオ大学は15日、誕生直後の月には水が豊富にあったという、現在の常識を全く覆す画期的な研究成果を発表した。
研究では、2015年にサウジアラビアの隕石ハンターによって発見されたAP007と名付けられた風化した石が、FANスイートと呼ばれる月の岩石特有の組織を有し、月から飛来した隕石であることを特定。アパタイトと呼ばれるリン酸塩鉱物がその石から検出されたことを明らかにしている。
この隕石は、45億年前の月で形成され、含まれているアパタイトの水含有量は2300ppmだったことが判明。これは従来考えられていた推定値130~300ppmよりも、はるかに多いものだった。実はアポロが持ち帰った月の石からも、2008年に行われた分析で揮発成分が発見され、多くの水分が含まれている可能性が示唆されていた。だが十分な分析精度が得られていない状態だったため、今回の発見は非常に画期的なものと見られている。
この発見はこれまで長い間、月が乾燥した世界だと信じられてきた常識を覆すもので、月の表面にある岩石には、鉱物に閉じ込められた水が豊富に存在する可能性があることを示した。また宇宙にはこのように鉱物に閉じ込められた水分が豊富に存在する可能性もあり、宇宙における水の起源解明に繋がる可能性もある。
なにより、月面で人類が長期滞在する際の水の確保も、地球から持ち込むことなく現地調達できる可能性があることになり、より多くの人類が月面で日常生活を送ることが可能になる時代が来るかもしれない。
なお今回の研究成果は、1月15日に「ネイチャーアストロノミー」で公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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