高性能と小型化  IoT機器の相反する要求に応える、世界最小の日本製オペアンプ

2024年11月10日 16:15

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

IoT機器はスマートフォンなどのウェアラブルデバイス同様、より高機能や多機能、高精度であることが求められるのはもちろんだ

IoT機器はスマートフォンなどのウェアラブルデバイス同様、より高機能や多機能、高精度であることが求められるのはもちろんだ[写真拡大]

 矢野経済研究所の「ワイヤレスIoT市場に関する調査」によると、2024年度のワイヤレスIoT市場規模はセルラーネットワークの好調に牽引され、前年度比8.7%増の3165万デバイスに成長すると予測されている。また今後は、自動車関連やスマートメーターソリューションなどのエネルギー関連、物流倉庫や製造業、建設業、介護施設での位置情報系IoTシステムの活用が進むと見込んでいる。

 これらのIoT機器はスマートフォンなどのウェアラブルデバイス同様、より高機能や多機能、高精度であることが求められるのはもちろんだが、それらと同じくらいに端末の小型化が求められており、搭載される部品にも小型化の欲求が高まっている。しかし、高精度を維持したままで部品を小型化するのは至難の業だ。

 例えば、オペアンプなどがその一つだ。オペアンプは小型IoT機器やスマートフォンなどにおいて、温度、圧力、流量などを検知・計測したセンサ信号の増幅に使われている部品だ。高度なアプリケーション制御のために、センサからの微小信号を高精度に増幅する必要があるが、高精度を維持したままで小型化するのは難しい。誤差要因となる入力オフセット電圧とノイズの発生を抑えようとすると、どちらも内蔵するトランジスタ素子サイズを大きくする必要があるため、小型化とは相反してしまうのだ。

 しかし、こういった矛盾する要求も技術力を駆使して克服していくところが、日本の製造業のエンジニアたちの凄いところだ。

 電子部品メーカー大手のロームは、現時点で世界最小のCMOSオペアンプの開発に成功した。同社が今年発表したCMOSオペアンプ「TLR377GYZ」は、独自の回路設計技術により開発したオフセット電圧を補正する回路を組み込むことで、トランジスタ素子サイズはそのままで最大1mVの低入力オフセット電圧を実現すると同時に、独自のプロセス技術により定常的に発生するフリッカノイズを改善。さらに素子レベルから抵抗成分を見直すことで、入力換算雑音電圧密度12nV/√Hzの超低ノイズを実現している。そして、独自のパッケージ技術でボールピッチを0.3mmまで狭小化したWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)を採用することで、従来品比約69%、従来小型品比でも約46%のサイズ削減を達成。スマートフォンや小型IoT機器などに最適で、低入力オフセット電圧かつ低ノイズによりセンサ回路の高精度化にも貢献する、世界最小のCMOSオペアンプだという。

 新製品のサイズは、0.88㎜×0.58㎜×0.33㎜。この極小サイズの部品の中に、日本のエンジニアたちがこれまで築き上げてきた技術が凝縮されていると思うと、熱いものが込み上げてくる。スマートフォンやIoT機器の発展とともに、日本の優秀なエンジニアたちの活躍の場がさらに拡大することを期待したい。(編集担当:今井慎太郎)

■関連記事
未来を大きく変える次世代移動通信システム6G。実用化の鍵は「テラヘルツ波」
若者たちは本当に「テレビ離れ」しているの? ティーンは実は「テレビが好き」
任意のはずのマイナカード 紐づけで普及狙う

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事