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【ビッグモーター不正問題】辞任した兼重父子は、何食わぬ顔で経営に復帰できるのか? (下)
車両の整備関係に国交省の行政処分が見込まれ、損保代理店の看板がなくなると、今後も継続できる業務は車両の買取と販売業務に絞られる。これだけ悪名が轟いたビッグモーターにクルマを売却したり、ビッグモーターからクルマを購入する人は、非常に限られると考えるのが自然だ。
【前回は】【ビッグモーター不正問題】辞任した兼重父子は、何食わぬ顔で経営に復帰できるのか? (上)
ちなみに、7月の中古自動車の平均落札価格は前年7月との比較で、8%低下したという調査結果がある。中古車市場は上昇傾向が続いていたことを勘案すると、単純にビッグモーターの影響とも言い切れないが、業界の低迷感は否めない。
今後ロシア向けの中古車に対する輸出規制が強化されることから、国内に滞留する中古車増が見込まれて価格は更に弱含みになる。業界にとってはありがたくない条件が重なる。
8月7日に信販大手のジャックスが、「ビッグモーター全店舗の自動車ローンの取扱いを停止した」ことを発表した。まだ窓口を閉ざしていない信販もあるようだが、いずれ歩調を揃えるようになると、ビッグモーターで中古車を購入する時には、「全額自己資金」を用意する必要がある。相当のハードルになることは間違いない。
未上場企業なので財務計数が不明だから数字上の分析はできないにしても、売上の大幅な低下が見込まれる。従来通りの人件費や店舗の維持管理費の支払いを継続することは不可能だから、人員の削減や店舗の売却が始まる。
そこに損害保険金の不正請求に関連する不当利得の返還や損害賠償が加算される。収支バランスが崩壊することは明らかだから、資金難で経営が行き詰まることは目に見えている。
健全な事業運営をしていた会社が資金繰りに問題を抱えた場合、銀行が融資という特効薬を注射して延命させるのが普通だ。ビッグモーターの場合は、不正の内容が悪すぎて銀行の審査には馴染まないから、銀行の支援がないまま資金が尽きて経営破綻に陥る可能性が高い。
最終局面に至る前に、M&Aで法人を売却する手もあり得るが、これだけ世の中から嫌悪されている企業を引き受けるような胆力を持った資産家が登場しなければ、株券は紙屑になり会社は消滅するので、兼重父子に再登板の余地はないと言ってもいいだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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