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相場展望2月13日号 米国: 決算イベント終了⇒2/14発表のCPIに警戒 日本: 決算⇒次期日銀総裁と金融政策に関心が移る
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)2/09、NYダウ▲249ドル安、33,699ドル(日経新聞より抜粋)
・米長期金利が上昇し、相対的な割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)を中心に売りが優勢となった。来週に重要な米経済指標の発表を控え、持ち高調整の売りも出やすかった。
・前週末の強い米雇用統計を受け、市場では年内の利下げ転換観測が後退している。2/9の米債券市場では長期金利が前日終値3.59%から、水準を切り上げ、一時は3.69%を付けた。幅広い年限の債券利回りが上がり、株式相場の重荷となった。
・来週には1月米消費者物価指数(CPI)の発表を控える。FRBの利上げペースにも影響を与えるだけに内容を見極めたいムードが強い。主要企業の決算発表が一巡した後でもあり、持ち高調整の売りが出た。
・朝方は買いが先行し、NYダウの上げ幅は一時+300ドルを超える場面があった。前日に発表した決算が市場予想を上回った映画娯楽のディズニーも高く始まったが、次第に売りに押されて下落して終えた。
・金融のゴールドマンサックスや半導体のインテル、ホームセンターのホームデポが下落した。検索サイトのアルファベットが連日で大幅安となった。一方、物言う株主の株取得が伝わった顧客情報管理のセールスフォースは上昇した。
【前回は】相場展望2月9日号 FRB議長「ハト派」発言を、FRB高官が「タカ派」で打消 インフレ目標2%に向け、金利7~8%程度に引上げ?
2)2/10、NYダウ+169ドル高、33,869ドル(日経新聞より抜粋)
・労働市場の強さを背景に米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止など政策転換が遅れるとの見方から、朝方は売りが先行した。
・ただ、米景気自体は堅調とあって売り込む動きは限られた。NYダウの構成銘柄で比重が大きいヘルスケアなどディフェンシブ株が買われ、指数を押し上げた。
・前週末に発表された強い米雇用統計を受け、市場ではFRBの利上げ停止や利下げ転換が先延ばしされるとの見方が強まっている。米ミシガン大学が2/10発表した消費者調査で1年後の予想インフレ率が+4.2%と前月から+0.3%上昇した。高めのインフレが続くとの観測につながった。
・こうした見方を反映し、米債券市場では長期金利が3.7%台半ばに上昇。長期金利が上昇すると売られやすい高PER(株価収益率)のハイテク株が下げた。
・映画娯楽のディズニー、クレジットカードのビザなど消費関連株の一角も売られ、NYダウは、朝方は下げる場面があった。
・もっとも、売りの勢いは限られ、NYダウはほどなくして上昇に転じた。雇用の強さは米景気の底堅さを映しており、景気後退は避けられるとの見方が買いを促した。ディフェンシブ株が堅調で、医療保険のユナイテッドヘルスや日用品のP&Gが上昇。ロシアの減産表明で原油先物相場が上げ、原油高になると買われやすい石油のシェブロンや建機のキャタピラーが上昇した。
・業績見通しが失望された配車サービスのリフトが急落、電気自動車のテスラも下がった。
●2.米国株 : 決算発表イベント終了⇒今週2/14発表のCPIに警戒モード
1)主要な米国企業の10~12月期決算発表が先週で終えた。個別企業の業績に対する強弱で株価は動いたが、総じて堅調な株式市場だった。その中で、気になる点がある。それは2/1~10の8営業日で、NYダウが3勝5敗と負け越したことだ。なお、その期間でのNYダウは▲217ドル安(▲0.6%安)と小幅安である。ハイテク株の多いナスダック総合指数も3勝5敗となった。
・2/1~10の騰落: 2023年 2022年(前年)
NYダウ 3勝5敗 5勝3敗
ナスダック総合 3勝5敗 5勝3敗
SP500 4勝4敗 5勝3敗
小型株のラッセル 4勝4敗 5勝3敗
2)12月相場は、年度末を背景に税金対策などで売られやすく。1月はその反動と新年度入りのニューマネーが流入することに加え、決算イベントで好業績企業の株高もあって、株式相場は強い傾向がある。そして、2月は決算発表イベントが終了するとともに、反動安となりやすくなる。まして、今年は市場の「米金利引上げ停止」「米金利引下げ」期待で株価は上昇したが、1月米雇用統計の予想以上の好調さで、「金利引上げ継続」が浮上し期待感が後退した。今週2/14に消費者物価指数(CPI)が発表されるが、市場に警戒ムードが漂ってきた。CPIの結果が上ブレると、再び「インフレ警戒」が強まり、FRBによる「金融引締め継続で、金利引上げ回数の増加」観測が強まると思われる。
3)米国株式市場は「決算発表イベント」が終了し、好材料がしばらく期待できない期間を迎えるため、気を抜けない状況に注意したい。
4)米株価は高い水準にある。決算発表の結果数値を見ると「1株利益」は低下傾向を示している。言い換えれば、高株価は「人気で買われた状態」の側面が強くなってきていると言える。企業業績が主導する株高ではない点を忘れないでおきたい。
5)米国株式のイベント日程
2/14 1月消費者物価指数(CPI)
2/15 1月小売売上高、
2/16 1月生産者物価指数(PPI)
●3.米・先週分新規失業保険申請件数+19.6万件、予想19.0・前回18.3万件(フィスコ)
1)6週間ぶりに増加したが、なお歴史的低水準にとどまっている。(ブルームバーグ)
労働市場が堅調であることが示された。
2)米国ではテクノロジー業界のほか、さまざまな業種でレイオフの動きが広がっているが、多くの企業、特に中小企業は依然として人員採用が困難なほか、従業員を自社に留めようと懸命になっている。 こうした状況は、物価上昇圧力を抑え込むのにしばらく時間が掛ることを示唆している。(ブルームバーグより抜粋)
●4.米リッチモンド連銀バーキン総裁、「インフレ制御に自信つくまで道のりは長い」(フィスコより抜粋)
1)FRBは、インフレを2%目標に戻すために路線維持する必要があるとの見解を示した。需要が低迷しているが柔軟性があり、労働市場も健全、加えてウクライナショックもあり インフレが高止まりしていることを理由に挙げた。
2)過去3カ月のインフレはポジティブだが、継続することを確信することは出来ない。インフレ制御に自信がつくまで、まだ道のりが長いとした。
●5.企業業績
1)リフト 利用者獲得で料金引下げ、業績見通しが予想を下回る(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)2/09、上海総合+38高、3,270(亜州リサーチより抜粋)
・中国人民銀行(中央銀行)の資金供給スタンスが好感される流れとなった。
・人民銀行は2/7まで市中から資金を引き揚げていたが、2/8から資金供給に転じ、2/9は3,870億人民元を市中に供給した。
・リオープン(経済再開)の進展を手掛かりに、中国景気の持ち直しが改めて意識された。
・米中対立の過度な警戒感も後退。バイデン大統領は2/8、「中国の気球問題に関し、対立は求めていない」などと発言した。大統領はそのほか、中国は欧米諸国との経済関係を重要視し、ロシアとは一定の距離を
置いている、との認識も示した。
・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、消費関連もしっかり、保険・証券も高く、医薬品・インフラ関連・素材・不動産・運輸なども買われた。
2)2/10、上海総合▲9安、3,260(亜州リサーチより抜粋)
・外部環境の不透明感が嫌気される流れとなった。
・米国の金利上昇と景気不安に加え、対中国圧力の強化が警戒された。「米国は中国に対する新たな規制の導入を検討しているもよう」と伝わった。報道によれば、米国企業が中国の先端技術開発に資金を提供することを制限する。
・もっとも下値を叩くような売りは見られない。リオープン(経済再開)の進展や、当局の景気テコ入れスタンスなどを背景に、中国景気の持ち直し期待が続いている。
・朝方発表された1月中国物価統計では、消費者物価指数(CPI)が前年同月比+2.1%となり、市場予想と一致した。生産者物価指数は▲0.8%となり、下落率は市場予想▲0.5%を上回った。
・業種別では、非鉄金属関連の下げが目立ち、石炭も冴えない、自動車・電器・船舶製造も売られた。
●2.中国国際収支、10~12月経常収支は+7,590億元(約14兆4,210億円)の黒字(新華社)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)2/09、日経平均▲22円安、27,584円(日経新聞より抜粋)
・米利上げの早期停止観測が後退し、前日の米株式市場が下落した流れが波及した。下げ幅は一時▲190円を超えたが、好決算銘柄などには買いも入り、日経平均は次第に下げ幅を縮小。午後には上げに転じる場面もあった。
・2/8の米株式市場ではハイテク株の下落が目立ち、東京市場でも朝方から運用リスクを避ける動きが優勢だった。東エレク・アドテストなど値嵩の半導体関連銘柄に加え、エムスリーなどPER(株価収益率)が高いグロース(成長)株に売りが目立った。
・売り一巡後は下げ渋った。米株価指数先物が堅調に推移したことや、中国・上海株や香港株の上昇が支援材料となった。
・NTTデータや住友鉱など決算発表を手掛かりに個別銘柄への買いも指数を支えた。2023年3月期の連結業績予想を据え置いたトヨタは、決算発表後に小幅高となった。明治・ヤマト・富士フィルム・三越伊勢丹が売られ、クラレ・帝人・大平金が上昇した。
2)2/10、日経平均+86円高、27,670円(日経新聞より抜粋)
・円相場が円安・ドル高に振れたことを背景に、海外投資家などによる株価指数先物への断続的な買いが入り、日経平均を押し上げた。
・好決算を発表した銘柄への買いも目立った。もっとも上値では利益確定売りが出たほか、中国・上海株などアジア株全般が軟調に推移したため、後場はやや伸び悩んだ。
・為替市場で円相場が131円台半ばと、前日夕に比べて円安・ドル高で推移し、輸出企業の業績改善が改めて意識された。日経平均の上げ幅は一時+200円を超えた。前日の米株式相場はハイテク株を中心に下落したが、日本株には波及しなかった。
・前日に決算や株式分割などを発表した東エレクが1銘柄で日経平均を68円押し上げたほか、神戸製鋼なども大幅高となった。
・市場関係者には「個別株材料で相場が押し上げられた形だが、日銀総裁人事や来週に1月米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、上値を追う意欲を持つ投資家は少ない」との指摘があった。
・東海カ・大日本印刷・ルネサス・三菱UFJ・MS&AD・テルモ・ダイキン・セコム・アドテストが高く、半面NTTデータ・フジクラ・三菱地所は安い。
●2.日本株:市場の関心は、決算発表イベント⇒金融政策へ転換
1)日銀新総裁人事の報道で「円相場」が振れ、その度に輸出関連株の株価が上下する。新総裁で「大規模金融緩和の継続」か「金融緩和終焉で金利引上げ」かの焦点に移っている。
2)最近の株式相場の特徴
・決算発表による材料で個別株が乱高下する相場展開。
・新・日銀総裁人事報道で、円相場が上下するたびに輸出関連株が乱舞する。
展開が目立っている。
3)「猫の目」のように相場展開がくるくる変わるようなムードが漂い始めてきたようだ。
4)欧米含む先進諸国の中央銀行は、インフレ対策として金利引上げを実施している。その世界の動向に背を向けて日銀は大規模金融緩和を継続する「孤高」を継続。日本でも、日銀政策の超緩和政策継続の結果、日本との金利格差拡大で円安が進行した。円安で輸入物価が上昇、企業はコスト転嫁で値上げラッシュを招き、物価上昇した。誰が日銀総裁になっても、長短金利の操作を含む大規模緩和策を続けるのは難しく、政策を修正せざるを得ないと思われる。
5)岸田政権は、「財務省が強い」。岸田首相は、広島県が生んだ宰相の池田・宮沢の流れの派閥のトップである。首相を支える自民党副総裁の麻生も同じ系列の派閥であり、麻生氏は安倍政権で長らく副総理兼財務大臣を務め、現財務大臣は麻生氏の義理の弟であり麻生派所属である。つまり、「増税」色の強い政権である。経済成長をさせて、その中から税収を増やすという考え方ではない。「ばら撒きの政府支出」をして、足らずを「増税に頼る」姿勢が濃い政権と言えそうだ。岸田首相は現在もなお「派閥のトップ」である。政権運営も人事含めて、派閥の力学を強く出している。
次期日銀総裁について報道されているが、現在の「超緩和策」の理論的主導をした人物と言われている。財務省は国債金利が1%上昇で約10兆円の歳出が増えるため、低金利継続のため「超緩和策の継続」を推進したがっていると想像する。国債金利を低く抑え込むには、国債売りに対抗して莫大な国債買いを黒田・日銀は実行している。そのため、日銀が保有する国債残高は膨張の一途を辿っている。つまり、問題の未来への飛ばしをし、かつ、その問題の種を大きくしているのが現状と言える。
世界主要中央銀行の流れに逆らい「世界で独り相撲」を目指す日銀となっている。学者肌だけに、果たして岸田首相や財務省がグリップできるかは不透明と思われる。
●3.日銀の新総裁人事で10年債金利が上限0.50%に接近(ブルームバーグ)
●4.企業動向
1)豊田通商 ソフトバンクGのSBエナジーの株式85%を買収(ブルームバーグ)
●5.企業業績
1)トヨタ 4~12月純利益は前年同期比▲18%減の1兆8,990億円黒字(読売新聞)
2)日産自 4~12月純利益は前年同期比▲42.9%減の1,150億円黒字(NHK)
3)東エレク 通期営業利益予想5,460⇒5,800億円黒字に上方修正、株式分割・増配(NHK)
4)神戸製鋼 通期純利益予想450⇒620億円に上方修正、前期比+3%増(日経新聞)
5)ワコール 通期純損益予想+80⇒▲40億円赤字に下方修正、創業来初めて(朝日新聞)
6)マツダ 通期純利益予想1,300⇒1,400億円黒字に上方修正、前期比+71.7%増(NHK)
7)アシックス 12月通期純利益198億円、前年比+2.1倍(読売新聞)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・3141 ウエルシア 業績堅調。
・9468 KADOKAWA 業績堅調。
・9519 レノバ 業績好調。
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