関連記事
相場展望1月26日号 市場はまたも楽観「金利引上げ停止」報道に注意 日本株: テクニカル指標「過熱感」、売りに注意
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)1/23、NYダウ+254ドル高、33,629ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦準備制度理事会(FRB)が近く利上げ停止を検討するとの観測が強まり、株買いを誘い、昨年売られたハイテク株などに見直し買いが入り、NYダウは一時+400ドル超上昇。今週はハイテク大手を含む主要企業の決算が相次ぐため、内容を見極めたいとの雰囲気から買いの勢いが鈍った。
・ウォール・ストリート・ジャーナル紙は1/22、FRBが1/31~2/1に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で「今春に利上げを停止するために労働需要や支出、インフレの鈍化がどの程度必要かを検討し始める可能性がある」と伝えた前週末にウォーラーFRB理事が次回会合で利上げ幅を0.25%に縮小する考えを示した。FRBの利上げが最終局面に入ったとの見方が強まった。
・「昨年の下げで値ごろ感が高まったハイテク株の買いにつながった」という。利上げ停止で金利上昇に歯止めがかかれば高PER(株価収益率)のハイテク株の割高感が薄れるとの期待感も買いを誘った。
・物言う株主による株取得が報じられた顧客情報管理のセールスフォースが上昇。半導体株全般の上昇を受け、インテルも高い。スマホのアップルも買われた。
・ハイテク株が多いナスダック総合指数は続伸、前週末比+223高(+2%高)の11,364と、12月上旬以来の高値で終えた。電気自動車のテスラが大幅上昇、アナリストが投資判断を引上げたAMDやエヌビディアなど半導体株の買いも目立った。
【前回は】相場展望1月23日号 株式相場は「決算発表イベント」へ移行 「見失ってはいけない現実/日本・中国・米国」
2)1/24、NYダウ+104ドル高、33,733ドル(日経新聞より抜粋)
・米景気の減速懸念の後退を受けた買いが続いた。ただ、ハイテク大手の決算発表を前に利益を確定する目的の売りも出て、相場の上値は重かった。
・米連邦準備制度理事会(FRB)が近く利上げ停止を検討するとの思惑などから、前日までハイテク株が買われていた。1/24は建機のキャタピラー・機械のハネウェルなど景気敏感株が買われ相場を支えた。
・朝方、10~12月期決算発表で売上が市場予想を上回った保険のトラベラーズも上昇。
・もっとも、前日までの続伸でNYダウは+580ドル余り上げ、利益確定売りに押される場面もあった。このところ買われたインテルなど半導体株の一角が下落。決算で1株利益が市場予想を下回った工業製品・事務用品のスリーエムは大きく下落。
・1/24は引け後にソフトウェアのマイクロソフト、1/25は電気自動車のテスラが決算発表をする。相場を見極める上で、ハイテク大手の決算を確認したいとして、積極的な取引が見送られる場面があった。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は3営業日ぶりに小反落した。
・ネット検索のアルファベットが下落した。米司法省が1/24、ネット広告事業が反トラスト法(独占禁止法)に抵触しているとして傘下のグーグルを提訴したのが響いた。
・一方、スマホのアップルは上昇した。
3)1/25、NYダウ+9ドル高、33,743ドル(日経新聞より抜粋)
・前日夕にマイクロソフトが発表した決算が嫌気され、ハイテク株の一部に売りが出て、一時▲460ドルほど下げた。
・マイクロソフトの1~3月期の売上高見通しが市場予想に届かなかった。景気減速による収益への影響が改めて意識され、売りが膨らんだ。1/25に決算を発表したボーイングの1株損益が市場予想に反して赤字だったことも、投資家心理の重荷となった。
・一方、売り一巡後は、マイクロソフトの決算発表を終え、材料出尽くしとの見方から、主力銘柄の一部に押し目買いが入り、指数を押し上げた。ボーイングも上昇した。
・米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペースが鈍化するとの見方が、引続き相場を支えている。
・ドル高が一服したことも、企業業績には追い風になるとの見方も出ていた。
・映画娯楽のディズニー・外食のマクドナルド・クレジットカードのアメリカンエキスプレスが上昇。一方、保険のトラベラーズ・バイオ製薬のアムジェン・石油のシェブロンが下落した。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は続落した。
●2.米国株:市場は、またも楽観「FRBの金利引上げ停止」報道で株価上昇に、注意
1)ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ紙)が報道した「金利引上げ停止」で、米国株は上昇した。その後、そのニュースに追随する記事は出てこない。株式相場は「噂」で買われ・売られることがあるが、このようなネタには注意したい。確かに、米連邦公開市場委員会(FOMC)が1/31~2/1で開催され、「利上げ幅について討議」されるが、内容は「+0.5~+0.25%」の範囲での討議だと思われる。いずれにしても、米金利は利上げされる状況にある。一部経済指標では鈍化を示すものが出始めているが、指標は依然として高水準にある。それだけに、「利上げ停止」のような「噂」を流して儲けようとする情報には注意したい。
2)決算発表シーズン入りしたが、失望売りが目立ち始める
・ボーイング 4年連続赤字、2022年は▲6,500億円赤字、品質問題が響く
・マイクロソフト 1~3月売上見通しが予想を下回る、景気減速懸念
・スリーエム 1株利益が予想を下回る。
3)失望売りで株価が叩かれても、その後「金融引締めの緩和」で出て買い直されている。
・これは、相場の地合が「楽観ムード」にまだ包まれているからだろう。
4)決算発表が本格化されるが、企業業績が予想を上回るか否か、注目したい。
・米国の経済成長率は、2022年+1.8%⇒2023年+0.4%と、国連などが予想している。+0.4%程度は、マイナスに転落する可能性がある数値である。頼みの中国経済の2024年+4.8%回復見通しも、感染爆発の後のリオープン(経済再開)を期待したものである。警戒を要すると思われる。
・このような2023年経済成長の状況下で、企業業績は都合良く期待したものになるだろうか。
5)欧米中央銀行の資金回収が株式市場に及ぼす影響も、見定めたい。
●3.株価上昇は景気減速と「衝突」へ、売りの舞台整う=コラノビッチ氏(ブルームバーグより抜粋)
1)景気が下降局面に向かっている時期に、株式相場は上昇している。これは「衝突」するしかない。金利上昇で消費者の底力が弱まるのに伴い、米欧経済がリセッション(景気後退)入りすると予想している。これは一斉売りの舞台を整えることになる=JPモルガンチェースのコラノビッチ氏コラノビッチ氏はウォール街で最も強気なストラテジストの1人だったが、12月半ばに株式の推奨配分を縮小。上値を追わないように警告する慎重派に加わった。その理由として、今年の軟調な経済見通しとFRBの過度な金融引締めへの懸念を挙げた。株式相場は、弱い経済指標と企業利益見通し悪化を背景に、下落と予想。
2)リスクを積み増すのは時期尚早だ=クレディSのグローバルCIOのストロバーグ氏
3)2024年には相場が回復に転じるものの、2023年は米経済が企業の収益不況に見舞われる厳しい年になると予想=モルガン・スタンレーのウィルソン氏
●4.グローバル不動産、不良債権22.7兆円か、信用不安と景気後退の恐れ(ブルームバーグより抜粋)
1)住宅市場から商業用不動産に至るまで、世界最大の資産クラスである不動産の価値が下洛し、経済に信用不安の波を引き起こす恐れがある。
2)既に、約1,750億ドル(約22兆7,000億円)相当の不動産関連の債権がディストレスト状態だとブルームバーグの集計データが示す。資金が楽に得られる時代の終焉と金利上昇による犠牲者が数を増しており、多くの不動産市場が機能をほぼ停止し、一部の貸手は借手に対し、資産を売却しなければ担保権を行使すると警告している。
3)MSCIのデータに基づくと、英商業用不動産価格は2022年下期に▲20%余り下落した。グリーン・ストリートによると、米国でも約▲9%下げた。
4)キャッシュフローが逼迫するデフォルト(債務不履行)予備軍のローンが存在すると指摘今年は「それらの問題が顕在化し始める」と見込む。
●5.海運コスト急低下、インフレ鈍化の前兆か=IMF元当局者が分析(ブルームバーグ)
●6.英11月生産者物価指数・産出は前年比+14.7%(フィスコ)
●7.ツィッター本社ビル、家賃滞納2カ月で8.8億円(FNN)
●8.蘭ASML、1~3月売上見通しが予想を上回る、半導体製造装置が好調(ブルームバーグ)
1)売上高予想60.7億ユーロ⇒61~65億ユーロ。
●9.米バイデン政権、主力戦車「エイブラムス」31両をウクライナに供与 (フィスコ)
1)ドイツ政府、ウクライナに戦車「レオパルと2」供与と発表、同盟国の供与も承認
●10.国連、世界経済成長率は2023年+1.9%に減速、2024年に持ち直しへ(ロイターより抜粋)
1)世界経済成長率:2022年+3% ⇒ 2023年+1.9% ⇒ 2024年2.7%
・経済・金融・地政学・環境など無数のリスクが存在し、短期的な経済見通しはなお非常に不透明とした。
米国内総生産(GDP)成長率:2022年+1.8% ⇒ 2023年+0.4%
欧州連合(EU)成長率: 2022年+3.3% ⇒ 2023年+0.2%
中国経済成長率 : 2022年+3.0% ⇒ 2023年+4.8%
・ゼロコロナ政策からのリオープン(経済再開)はスムースにいかないことも予想。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)1/23、上海総合:祝日「春節」で休場
2)1/24、上海総合:祝日「春節」で休場
3)1/25、上海総合:祝日「春節」で休場
●2.中国株、海外勢が年初から記録的買い、2022年通年の流入額超える(ロイター)
1)年初からの買越し額は912億元(134.5億ドル)で、2022年の900億元を上回った。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)1/23、日経平均+352円高、26,906円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米ハイテク株急伸や円安・ドル高を支えにし、指数への影響度が高い値嵩株や半導体関連株が軒並み上昇し、昨年12/19以来、1カ月ぶりの高い水準を付けた。
・取引終盤に掛けて断続的な買いが入り、日経平均は徐々に買い幅を広げた。
・為替市場で、日銀の金融緩和姿勢を意識した円売り・ドル買いの勢いが強く、円が129円台後半まで下落したのを受けて、海外短期筋による株価指数先物への買いが入った。
・もっとも、前週末の米市場では長期金利が上昇するなど、まちまちの動きだったことから、午前は日経平均の上値が重くなる場面も目立った。
・中国からのインバウンド(訪日外国人)需要回復に対する過度な期待が後退し、関連銘柄の百貨店や陸運の一角が下落した。
・ファストリ・東エレク・ソフトバンクG・ダイキン・アドテストが上昇した。エーザイ・三越伊勢丹・高島屋・千葉銀が下落した。
2)1/24、日経平均+393円高、27,299円(日経新聞より抜粋)
・前日の米ハイテク株高や中国景気の回復期待から半導体関連など景気敏感株を中心に買いが入り、心理的節目の27,000円を上回り、12/16以来およそ1カ月ぶり高値水準。短期筋による株価指数先物への買戻しも相場を押し上げた。
・1/23の米株式市場で主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅に上昇した。
・米連邦準備制度理事会(FRB)が1/31~2/1に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で今春に利上げを停止することを検討する可能性があるとの観測報道が支えとなった。
・日経平均は、日銀が12月に金融政策を一部修正し、事実上の利上げに動く直前の水準である12/19の終値27,237円を上回った。日銀の政策修正が続くとみて株価指数先物を売建てていた投機筋の買戻しが活発化し、日経平均の上げ幅は一時+470円を超えた。
・半面、このところ急速な上昇で目先の過熱感が意識され、上昇が目立っていた鉄鋼や内需株は売りに押された。
・主要企業の決算発表が本格化するのを前に投資家の様子見姿勢も強まり、日経平均は大引けに掛けてやや伸び悩んだ。
・アドテスト・東エレク・ファナック・ソフトバンクG・三菱商事・ダイキンが上昇。一方、日本製鉄・川崎汽船・エーザイ・ニチレイが安かった。
3)1/25、日経平均+95円高、27,395円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式市場でNYダウは小幅に3日続伸した一方、利益確定の売りが出たハイテク株比率の高いナスダック総合は下落した。
・朝方は利益確定売りに押され一時▲120円安を超えたものの、次第に幅広い銘柄に買いが入り、12/16以来およそ1カ月ぶりの高値水準となった。株価指数先物への買戻しも相場を押し上げた。「経済情勢などに基づいて売買するグローバルマクロ系のヘッジファンドなどが先物に買いを入れた」との声が聞かれた。鉄鋼や海運など景気敏感株の上昇が目立った。
・大日本印刷・凸版が大幅上昇しスズキ・日本製鉄が高い。半面、2023/3期利益見通しを引下げた日本電産が大幅安、エムスリー・アドテストも下落した。
●2.日本株:テクニカル分析は過熱感を示唆し、売りに注意
1)このところ日経平均の上昇で、利益確定売りが散見され始めた
2)テクニカル分析 : 買われ過ぎを示唆
・ストキャスティクス
1/17 1/25
RSI 48 72
FAST 41 98
SLOW 56 88
・騰落レシオ(6日) 99 252
3)株式先物市場は、1/17から海外投資家の買いが目立ち、日経平均上昇をリードしている。
・取引時間内での海外投資家の買越し枚数の推移
1/17 1/18 1/19 1/20 1/23 1/24 1/25
266枚 9,634 9,381 ▲900 3,835 12,420 12,547
・海外投資家の「買い」は純粋の買い増しではなく、「売りの買戻し」と思われる。「買戻し」の場合、買いは「買い上がらない」可能性があるので、追随するのは注意したい。
4)決算発表シーズンだが、企業業績に弱気の反応が気になる
・史上最高値の利益を発表しても、予想に届かないと売られる銘柄が増えている。
・円安⇒円高への転換で、輸出企業を中心に業績不安が漂い始めた。
・ここのところの急上昇で、反動安が出やすい地合になっている。
5)日経平均をチャートでみると、ボックス圏での値動きとなっている。
・今の環境下では、ボックス圏を打ち破る勢いはないと思われ、吹いたら売り・押し目買いに徹することがよさそうな相場に変わりはないと思われる。
●3.外食チェーン2022年売上、前年比+13.3%増、3年ぶり前年を上回る(NHK)
1)コロナ前の2019年比では▲5.8%減、特に「パブ・居酒屋」は夜間需要が戻らず。
●4.企業動向
1)ダイハツ 国内の1工場を一時停止、半導体不足・部品供給の滞り(時事通信)
2)横浜銀行 神奈川銀行を買収し完全子会社にする方向で最終調整(NHK)
3)北海道電力 家庭向け「規制料金」平均32%余りの値上げ申請(NHK)
●5.企業業績
1)東京電力 今期純損失見込み▲3170億円、29%の値上げ申請(ブルームバーグ)
電気代は6月から標準で+2,611円アップ、値上げ対象1,000万件(時事通信)
2)ディスコ 23/3期純利益+747億円、前期比+13%増、予想800億円を下回る(日経新聞)
3)ジャフコ 10~12月期売上高は前期比▲59%減の97億円、営業利益+4億円(フィスコ)
4)日本電産 2023/3期営業利益見通し+2,100⇒+1,100億円に下方修正(京都新聞)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・6962 大真空 業績好調。
・8410 セブン銀行 業績堅調。
・9519 レノバ 業績好調。
スポンサードリンク
関連キーワード
中島義之氏のコラム一覧
- 相場展望11月4日号 米国株: トランプ氏と議会選で共和党勝利⇒一時的株高⇒後、金利高で株安? 日本株: トランプ氏は同盟国にも関税10%適用⇒日本は輸出減・円安
- 相場展望10月31日号 日本株: 首相は「政権維持」に集中、「政策実行は停滞」⇒株価には重荷 一方、野党の要求を優先⇒財政拡大し、株価には追い風も
- 相場展望10月28日号 日本株: 石破政権は早晩に行き詰まり短命に 投機筋の株買いの追随は慎重に
- 相場展望10月24日号 米国株: トランプ氏勝利⇒米国はインフレ・金利上昇、中国経済は奈落へ 日本株: 円安も、短期筋の先物売り浴びせ・米国株安を受け下落に転換
- 相場展望10月21日号 米国株: 大統領選挙日の11/5までは堅調な米国株式相場が続くと予想 日本株: 「選挙は株高」という経験則は、今回は有効か?
- 中島義之氏のコラムをもっと読む