スーパーコンピュータ解析で判明した、銀河系誕生の歴史 東北大らの研究

2022年11月16日 11:44

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本研究で行われた天の川銀河形成シミュレーションによる星とガスの分布。黄色で描かれていているのが星、水色で描かれた粒子がガスを表す。(画像: 東北大学の発表資料より (c) Yutaka Hirai)

本研究で行われた天の川銀河形成シミュレーションによる星とガスの分布。黄色で描かれていているのが星、水色で描かれた粒子がガスを表す。(画像: 東北大学の発表資料より (c) Yutaka Hirai)[写真拡大]

 私たちの銀河系は、宇宙が誕生して間もない頃に形成されたが、どのように誕生し、どのようなプロセスを経て現在の姿に至ったのかについては謎に包まれたままだ。いっぽう太陽が誕生したのは今から約50億年前で、銀河系が誕生してかなり時間が経過してからのことだった。

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 太陽系に重金属元素が存在していることから、かつて存在した大質量星が超新星爆発を起こした残骸の星間ガスから太陽が誕生したのは明らかだ。だが重金属をもたらした大質量星が、いつ誕生してどのように進化してきたのかも謎に包まれてきた。

 これらの謎に迫る研究情報が明らかにされた。東北大学は14日、国立天文台、神戸大学との共同研究により、スーパーコンピュータ「アテルイII」を用いて、天の川銀河の形成プロセスを世界最高解像度でシミュレーションすることに成功したと発表。金、プラチナ、ユーロピウムなど鉄より重い元素に富んだ星の多くが、100億年前に天の川銀河の元となった小さな銀河で形成されたことが示されたのだ。

 このシミュレーションは、ビッグバンの際の黒体輻射の観測結果に基づく、宇宙誕生初期の密度のムラを反映。ダークマターによる重力の影響も考慮した非常に精密な解析モデルを用いて、ガスが重力で集まり、恒星の核となって、やがて輝き進化していくプロセスの再現に成功している。

 しかも現在の天の川銀河が形成される元になったと考えられるより小さな銀河に分解し、それらの銀河の中での星の誕生形成プロセスを再現することにも成功した。この銀河系形成プロセスのアニメーションはYoutubeでも公開されている。

 この解析の結果、鉄より重い元素に富む9割以上の星が、宇宙誕生から40億年以内に形成されたことが判明した。宇宙誕生初期の小さな銀河ではまだガス量が少なく、一度の貴金属合成現象でも銀河全体の鉄よりも重い元素の割合が高くなるのだという。私たちの体の中にも存在している重元素も、100億年以上昔に誕生した恒星の中で形成されたものだったとは驚きだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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