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科学による赤ちゃんの寝かしつけ術 理研らが研究
赤ちゃんに4つのタスクをそれぞれ30秒間行った結果。(画像: 理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]
赤ちゃんの寝かしつけに苦労する親は少なくないだろう。抱っこでなんとか眠った赤ちゃんをベッドに下ろした瞬間「背中スイッチ」が作動して泣き始め、また最初からやり直し・・そんな経験がある人も多いのではないだろうか。理化学研究所は14日、赤ちゃんの泣き止みと寝かしつけを科学的に分析し、その極意のヒントを発見したと発表。この発見は、寝かしつけに悩む親たちを救ってくれるかもしれない。
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この研究は、理化学研究所の大村菜美研究員、黒田公美チームリーダーらの国際共同研究グループにより行われ、研究の成果は、14日の「Currennt Biology」オンライン版に掲載された。
赤ちゃんは言葉を話すことができないため、泣くという行動は自分の意思を伝える手段だと考えられる。生後1カ月半頃の赤ちゃんは約3時間泣いており、起きている時間の3分の1にもなる。そういうわけで赤ちゃんが泣くのは当たり前のこと、昔から「赤ちゃんは泣くのが仕事」と言われている所以だろう。
しかし、赤ちゃんが長時間泣き続けることは、周りの人々や家族にとってはストレスになりうることだ。鳴き声が近所の迷惑になっているのではないか、家族が睡眠をしっかり取れない、などの状態が続くことは、虐待の原因にもなりうる。
今回研究グループは、生後7カ月以下の赤ちゃん21人と母親に、「抱っこして歩く」「抱っこして座る」「ベッドに置く」「ベビーカーを前後に動かす」という4つの行動をしてもらい、その時の赤ちゃんの泣き声や目の開閉の状態と心電図を記録した。
まず、上記4つの行動を30秒行った時の赤ちゃんの状態を調査。すると、泣いている状態の赤ちゃんは、「抱っこして歩く」「ベビーカーを前後に動かす」場合泣き止み、「抱っこして座る」場合は泣き止まなかった。一方元々泣いていない赤ちゃんは、「抱っこして歩く」「ベビーカーを前後に動か」しても変化がなく、「抱っこして座る」場合は泣き出してしまう傾向が見られた。
これらの結果より、赤ちゃんが運ばれる「輸送状態」が泣き止みに効果があることが判明。これは野生の哺乳類が危険が迫っている時に赤ちゃんを運ぶため、親に協力するように大人しくなる「輸送反応」と同等のものと考えられる。
さらに、激しく泣いている赤ちゃんを5分間抱っこして歩いたところ、全ての赤ちゃんが泣き止み、45.5%の赤ちゃんが眠った。赤ちゃんの寝かしつけの最後の大きなハードルが「眠った赤ちゃんをベッドに置く」ことである。抱っこして眠ったように見えた赤ちゃんをベッドに置いた途端、目覚めて泣き出したという経験をした人も多いだろう。
研究グループは、ベッドに置かれる時の赤ちゃんの心電図を調べた。すると、赤ちゃんは抱っこからベッドに置かれる時に心拍数が上がる、つまり緊張状態になることが判明。そしてそのタイミンングは、背中がベッドにつく時ではなく、赤ちゃんのお腹が母親から離れる時だった。つまり、赤ちゃんを覚醒させるスイッチは背中ではなくお腹にあったのだ。
さらに、赤ちゃんを起こさずにベッドに置く方法を調査。ベッドに置いた時に起きた赤ちゃんと眠り続けた赤ちゃんとの違いは、抱っこのまま眠っていた時間の長さだった。抱っこの状態で眠っていたのが5分以内だと起きてしまう場合が多く、5~8分待ってからベッドに置いた場合、そのまま眠りについてくれることが多いことがわかった。
今回の研究は、赤ちゃんと母親の間で行われたが、他の家族やベビーシッターなどの他人でも同様の結果になるのか、今後さらに研究が進んでいくことを期待したい。研究成果は、赤ちゃんに関わる人々のストレスが軽減され、さらには虐待などが起こることを防いでいく可能性があるだろう。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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