相場展望9月5日 米国株:2番底か新1番底形成へ 米国株と世界景気は、原油価格とは『逆相関』 日本株:外国人投資家の売り転換確認

2022年9月5日 09:26

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

1)9/1、NYダウ+145ドル高、31,656ドル(日経新聞より抜粋
 ・前週末からの急ピッチな大幅安の後もあり、景気敏感株とディフェンシブ銘柄に持ち高調整の買いが優勢となった。J&J・バイオ製薬のアムジェンの上げが目立った。
 ・米長期金利が2カ月ぶりの水準に上昇し、利ざや改善期待から金融株も上昇した。
 ・反面、景気敏感株のボーイング・ダウが安く、高PERのハイテクが売られた。米政府が中国とロシアへの先端半導体の販売を制限したのを嫌気し、半導体が下落。

【前回は】相場展望9月1日 バイデン大統領の反インフレ退治策で景気どん底リスク 日本株8月健闘も、9月懸念材料に注意

 2)9/2、NYダウ▲337ドル安、31,318ドル(日経新聞より抜粋
  ・米8月雇用統計の雇用者数の伸びが+31.5万人増と7月+52.6万人、市場予想の範囲内にとどまり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速の懸念が和らいで+370ドル高。だが、金融引締めの長期化が景気を冷やすとの観測自体は変わらず、買い一巡後は売りが優勢となり下げに転じ、日中の高値と安値幅は844ドルに達し不安定な相場。
  ・ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムは9/2、欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム」の停止を延長すると発表した。
  ・欧州景気の下振れにつながるとの懸念も投資家のリスク回避を促した。
  ・景気敏感株の下げが目立ち、スリーエム・ハネウェル・ダウが安く、ディフェンシブ銘柄の一角は底堅かった。ナスダック総合は6日続落、メタ・テスラの下げが目立った。

●2.米国株:原油価格と米国株とは『逆相関』、原油上昇で米株価は2番底か新1番底へ

 1)原油価格は世界景気とは「逆相関」

 2)原油価格はインフレと「相関」

 3)世界経済は原油価格上昇で鈍化へ

 4)原油価格上昇は需要減速・企業業績悪化を招く

 5)原油価格上昇⇒インフレ再騰⇒世界需要減退⇒企業業績悪化・株価低下へ

 6)今後、原油価格反発上昇⇒米インフレ率再騰の方向に
  ・米戦略原油備蓄を11月以降、補充で原油価格上昇。
  ・OPECプラスの盟主サウジ、原油減産示唆。
  ・アンチ米国のサウジ、イランはロシアに協調。
  ・米バイデン大統領は増産要請でサウジ訪問も、ゼロ回答で手ぶらで帰国。
  ・直後にサウジ皇太子はロシアに協調する旨、プーチンと電話会談。
  ・増産余地のあるナイジェリア、アルジェリアは内戦で原油生産増に支障。
  ・G7、ロシア産原油に12月から価格上限設定⇒供給不足で価格高騰リスク。

 7)米NYダウは2番底または新1番底形成へ、NYダウと原油価格は『逆相関』
  ・NYダウ推移(終値)            TWI原油先物価格
    1/04  36,799ドル           1/03  76.08ドル
    6/17        29,888(▲6,911、下落率▲18.8%) 6/08 122.11
    8/16   34,152(+4,264、戻り率+61.7%)       8/16  86.53
    8/26   パウエルFRB議長講演:金融引締め強化明確化でNYダウ大幅下落
    9/02      31,318(▲2,834、下落率▲8.3%)   9/02  87.25

  ・原油再騰リスク高まり、消費者物価(CPI)・インフレ率再加速懸念が増す。
  ・NYダウのチャートは8/16天井で上昇波動が崩れ、下落基調が続く。NYダウは今後、2番底もしくは新1番底へ。
  ・SP500も、75日移動平均線を大きく割込み9/2には3,924と、下落基調へ。
  ・米国株を牽引してきたハイテク株の中でも半導体関連株の下落が顕著。フィラデルフィア半導体株指数:8/4 3,081⇒9/2 2,677(下落率▲13.1%)原油価格上昇でエネルギー株と、長期金利上昇で利ざや拡大期待の金融株は底堅い動きが想定される。が、それ以上に株価上昇が目立ったハイテク&景気敏感株の下落が大きく、全体として厳しい展開を予想する。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/1、上海総合▲17安、3,184(亜州リサーチ
  ・中国経済の不透明感が投資家心理の重石となる流れとなった。
  ・国内では、新型コロナ感染拡大に伴い、行動規制など防疫措置が各地に広がっている。四川省成都市は9/1からロックダウン(都市封鎖)を実施すると公表した。それより先、中国南部の深圳市や広州市でも市内の一部で新たな防疫措置を導入した。
  ・中国景況感の悪化も懸念材料で、8月財新中国製造PMI(民間)は予想を下回る49.5となり、景況判断の境目となる50を3カ月ぶりに割込んだ。昨日、国家統計局発表の中国製造業(PMI)は49.4となり、前月49.0と市場予想49.2を上回ったものの、景況判断の境目の50は前月に続き下回った。
  ・中国政府の経済対策の効果が期待され、指数は小高く推移する場面が見られたものの、上値は重く、再びマイナスに転じた。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、運輸・物流も冴えない。反面、石炭は高い。

 2)9/2、上海総合+1高、3,186(亜州リサーチ
  ・自律反発狙いの買いが相場を支える流れとなった。
  ・上海総合指数はこのところ急ピッチに下落し、足元では約1カ月ぶりの安値水準に落ち込んでおり、中国政府の経済対策効果に改めて期待された。
  ・国務院は8/31の常務会議で、先ごろ策定した19項目にわたる新たな経済対策パッケージに関し、9月上旬にも詳細を明らかにすると表明した。ただ、上値は重い。
  ・中国経済の不透明感が引続き重石となり、指数は安く推移する場面も見られた。
  ・国内では、新型コロナ感染の防疫措置が広がっている。新規感染者数の増加を受け、四川省成都市は9/1から事実上のロックダウン(都市封鎖)に突入。北京市周辺や中国北東部、南部の一部地域でも行動制限が強化された。経済活動が停滞すると懸念されている。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、素材・インフラが買われ、不動産が安い。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/1、日経平均▲430円安、27,661円(日経新聞より抜粋
  ・米国の金融引締めや、欧米の高インフレなどで海外景気の悪化懸念が一段と強まる中、リスク回避の売りが優勢となり、下げ幅は一時▲500円を超え、8/2以来の安値。
  ・米中対立の再燃への警戒もあってアジア株安が、日本株の売りに波及した。
  ・米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引締めを続け、利下げの時期が市場の想定より先送りされるとの見方が強まり、前日の米株株式市場の主要3指数が下落した。
  ・欧州の高インフレも続く中、世界景気の減速懸念から、東京市場でも景気敏感株を中心に幅広い銘柄に売りが出た。
  ・米政府の中国・ロシア向け先端半導体出荷抑制措置で、半導体製造装置関連株は重荷。
  ・東エレク・アドテスト・丸紅・デンソー・住友鉱が下げ、積水ハウス・日本製鉄が上昇。

 2)9/2、日経平均▲10円安、27,650円(日経新聞より抜粋
  ・寄り付きは前日の大幅安を受け、自律反発狙いの買いが値嵩株に入り一時+100円高。一巡後は戻り待ちの売りに押され下げに転じたが、押し目買いも入り下げ幅は限定的。
  ・米8月雇用統計の公表を控え、米国の経済や金融政策の先行きに対する警戒感を背景とした売りが優勢だった。
  ・米長期金利の上昇を受け、ハイテクなどグロース(成長)株などが売られ指数は下落。
  ・市場では「為替が140円と円安の進行が下値を支える要因になったが、投資家の米金融政策の引締めに対する警戒感は相当強く、上値を抑えた」と見ている。
  ・東証業種別では、鉄鋼・空運・非鉄金属・鉱業の下げが目立った。
  ・ゲーム関連・第一三共・東エレク・INPEX・三菱商事が安く、ファストリが上昇。

●2.日本株:日本株の潮流が転換、弱気相場入りの可能性

 1)年初来新高値・新安値銘柄数の推移 : 潮流悪化傾向が明確になりつつある
          8/16  8/17  ⇒  9/01  9/02
  年初来新高値   75   139      23   15
  年初来新安値   5    1      29   45
  日経平均(円) ▲2   +353    ▲430  ▲10

 2)外国人投資家は、8/22~26の週に▲3,759億円と売り転換
  ・株式先物市場では、外人投資家は8/23から一貫して売りに転じている。
  ・反面、個人投資家(現金)は、買越し+524億円に転換。

 3)日経平均の推移
  ・日経平均 : 8/17 29,222円 ⇒ 9/02 27,650  ▲1,572円・下落率▲5.4%
  ・日経平均は8月高値から9/2安値までの下落率は、NYダウの▲8.3%より小さく、日本株の方が底堅い動きを続けている。
  ・しかし、外国人投資家の8月までの買越額2.7兆円から見ると、売り転換は最近始まったばかりである点に注目。外国人の、本格的な売り仕掛けに注視したい。

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・1605 INPEX   好配当期待
 ・5020 ENEOS   好配当期待
 ・5401 日本製鉄  好配当期待
 ・9022 JR東海   業績回復期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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