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相場展望6月6日 米インフレ退治で『景気後退のハードランディング』懸念 中国・習体制3期目の行方に注目、李首相の評価上昇
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/2、NYダウ+435ドル高、33,248ドル(日経新聞より抜粋)
・米雇用統計6/2発表が市場予想を下回り、米連邦制度理事会(FRB)が積極的に引締めるとの懸念がやや和らぎ、マイクロソフトが上昇に転じたのも投資家心理を改善した。
・米民間雇用サービス会社ADPの5月非農業部門雇用者数が12.8万人増にとどまり、FRBのタカ派姿勢の後退を見込んだ買いが入った、という。
・米長期金利の上昇が頭打ちになったことと相まってハイテク株の買いを誘い、セールスフォース+7%高、アップルも高い。
・利上げが景気を冷やすとの見方が弱まり、景気敏感株も買われ、ボーイング・ハネウェル、消費関連のホームデポ・ビザも買われた。
【前回は】相場展望6月2日 米株式相場「下落⇒反発⇒下落」の過程にある 「売られすぎ局面で拾い」⇒「跳ねたら売り」展開を予想
2)6/3、NYダウ▲348ドル安、32,899ドル(日経新聞より抜粋)
・米5月雇用統計で雇用者数の増加幅が市場予想を上回り、米連邦制度理事会(FRB)による積極的な金融引締めへの警戒感が広がり、NYダウは一時▲400ドル下げた。
・雇用統計では非農業部門の雇用者数が+39万人増え、4月43.6万人からは減速したが市場予想32.8万人は上回った。平均時給は前年比+5.2%増と市場予想と一致したものの高い伸びが続き、FRBがインフレ抑制のために秋以降も利上げを続けるとの見方が強まった。
・米長期金利が一時2.98%に上昇し、ハイテクなど高PER銘柄に割高感が意識された。
・週末を前に持ち高を整理する目的の売りも出やすかった。
・米原油先物相場が120ドル台に上昇し、米景気や消費を冷やすとの懸念も意識された。
●2.米国株:
インフレ退治で『景気後退へのハードランディング』の可能性大
米株式相場は、『楽観的過ぎる』⇒『過剰マネー相場終焉』の影響を受ける
1)米インフレの米5月雇用統計、就業者+39万人増と、6月利上げは+0.5%に追い風となり警戒強まる。ところが、米株式市場には『楽観的過ぎる』市場関係者が多くいる。彼らは、FRBが9月には小幅な+0.25%と利上げペースを決定し、金融引締め緩和の可能性があると指摘する。しかし、米インフレの前月比の伸び率は鈍化しても、高水準圏が続くと予想されるため、9月の利上げ幅は「+0.5%」と異例の3回連続の大幅となる可能性が高いと見ている。なお、一部の市場参加者からは、米国経済は想定よりも悪化すると警戒の声がある。
2)米労働省6/3発表の5月雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比+39.0万人増と市場予想を上回る伸びとなった。また、失業率は3.6%で、3カ月連続と好調な労働環境を反映している。したがって、6・7月の利上げは+0.5%と、FRBは積極的な利上げを進めるとみたれる。インフレ率の低下は期待できないと思われ、9月の利上げも「+0.5%」と見る。その要因は、
(1)労働需要が依然として逼迫感の強い水準が続き、平均時給の伸びは高い。平均時給の伸び:5月は前月比+0.3%上昇、前年比+5.2%。前月比の伸びは鈍化したものの、前年比は依然として高く賃金インフレが続く。
(2)原油価格が120ドル近辺に再騰、さらに米ガソリンは夏期休暇の需要期を迎え、高水準が続いている。
(3)小麦等の農産物価格は、ロシアの侵攻でウクライナからの輸出困難に加え、ロシア・インドなどの輸出国の輸出禁止などで高止まりが続く。
(4)米国の家賃上昇は始まったばかりで、本格的な上昇はこれから。家賃上昇改定は、米住宅価格上昇後の1年~1年半後から現れるため。
3)米経済は、高成長からソフトランディングを予想する株式市場関係者の期待の声があるが、現状を見るとハードランディングにならざるを得ないと思われる。今回の米インフレを招いた要因は、2つある。
(1)FRBによる超金融緩和策を起因とした、『過剰マネー相場』と「資産インフレ」
(2)バイデン政権による2021年春の大盤振る舞いの『超膨張予算』と「過剰消費」。FRBとバイデン政権が、米インフレを起こした要因は我々にあると反省しない限り、インフレ退治のソフトランディングはできないと見る。彼らは反省しないと思われるので、『ハードランディング』となる可能性が大と見る。よって、米インフレ抑制のためには『景気後退』が濃厚と思われる。
4)中国経済が都市封鎖の解除で、経済正常化に向かい、世界経済の下支え期待がある。しかし、経済を無視したイデオロギー主体の発想をする習近平・国家主席のリードが続く限り、期待外れとなる公算がある。
5)米株式相場はしたがって、中国頼みの株式上昇が剥離する可能性がある点に注意したい。
●3.米クリーブランド連銀総裁、米インフレ低下しなければ9月も0.5%の利上げ(ロイターより抜粋)
1)6・7月に実施する+0.5%の利上げから+0.25%に、金融引締めペースを減速させるには、インフレがピークを付けたと示す説得力のある証拠が必要との考えを示した。
●4.米5月ISM非製造業景況感指数55.9、予想56.5・4月57.1を下回る(フィスコ)
●5.米5月ADP民間雇用+12.8万人増、予想+30万人増を大きく下回った(ロイター)
1)求人数は依然として極めて高い水準で推移しているものの、金利上昇や金融環境が引締まるなか、労働需要が減速し始めていることを示唆する結果となった。
●6.WファーゴCEO、「米FRBによる米経済の軟着陸は極めて困難」(ロイター)
●7.OPECなど産油国は、7月の原油生産日量64.8万バレル増産を決定(NHK)
●8.原油急落、サウジとUAEが即時増産を検討と報道、供給拡大前倒しも(ブルームバーグ)
1)NY原油先物相場は6/2の時間外取引で一時▲3.1%下落、112ドルを割込んだ。
●9.ロシアvsウクライナ関連
1)サウジが増産、制裁でロシア原油大幅減なら=FT誌(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/2、上海総合+13高、3,195(亜州リサーチより抜粋)
・政府関係部局は雇用やインフラ投資、産業支援、消費振興などに向けた対策を相次いで発表してことから、景気腰折れが回避できるとの見方が高まった。
・また、中国財政部は6/2、今年1~5月の専項債(公益事業向け資金調達を行なう特別地方債)発行額が2兆300億元(約39兆円)に達したと報告した。専項債の利用範囲をさらに拡大し、新インフラや新エネルギープロジェクトなどを重点対象に含める考えも示した。ただ、上値は重い。
・明日は端午節の祝日で、本土・香港市場が休場となることもあり、積極的な売買も手控えられた。
・業異種別では、自動車の上げが目立ち、ハイテクも高い。反面、不動産が冴えない。
2)6/3、「端午節」の祝日で休場
●2.中国株:習近平の「イデオロギーのゼロコロナ政策」、李克強の「雇用重視の経済実務派」との対立の行方に注目
1)中国経済が新型コロナのロックダウン解除で、経済正常化・サプライチェーン混乱解消に向かうとし、世界経済の下支え期待が出ている。しかし、習近平・国家主席は「イデオロギー主体の考えで、ゼロコロナ対策による厳格なロックダウン政策を改め、経済実務的なコロナ対策に変更しない限り、中国経済の経済正常化は期待したほどのものにならない」と思われる。
2)中国は新型コロナ感染抑制として、「ゼロコロナ対策」で「ロックダウン(都市封鎖)」を厳格に実施している。論理的な、中国ワクチン接種・治療薬の推進はまったく聞かれない。中国ワクチンのアフリカなど世界配布で中国外交を推し進めて豪語していた中国とは思えない。教条的なイデオロギーで『ゼロコロナ政策』を厳格に推し進めているが、これでは中国経済が持たないし、サプラウチェーン混乱を引き越すなど世界景気への悪影響も出ている。
3)李克強・首相は、『経済実務派の発想で経済重点33項目などの政策』を発表し、失業率の改善など中国経済回復にまっしぐらの運営に邁進している。李首相の発言には、「ゼロコロナ対策」の一言もない。
4)今秋、中国共産党大会が開催され『習・3期目体制』が承認される可能性が高まっている。
5)国営新聞・新華社などの記事で、李首相の演説文が掲載されるようになった。今夏、河北省にある避暑地での中国共産党長老を含めた全体会議で、今秋の共産党人事などが議論されるといわれる。その場で、習・3期目も論議されると思われるが、この避暑地での全体会議の議論の行方に注目したい。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/2、日経平均▲44円安、27,413円(日経新聞より抜粋)
・米金融引締めへの警戒感が再び強まり、前日の米株式相場が下落し、東京市場でも売りが先行し、朝方に日経平均の下げ幅は一時▲200円を超えた。最も、円相場が130円台の円安になったのが支えとなり、株価の下値は限られた。
・米5月ISM製造業景況指数が市場予想を上回ったことから、FRBが金融引締めを一段と強めるとの見方から、東京市場でも株価指数先物を中心に売りが出た。
・市場では「今週末に公表される米雇用統計も想定以上に上振れすれば、株式市場が下押しする」との声が聞かれた。
・アステラス・武田・ソニー・任天堂が下落し、ファストリ・東エレクが上げた。
2)6/3、日経平均+347円高、27,761円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式相場の上昇を受けて、東京市場でも投資家心理の支えとなりグロース(成長)株を中心に買いが入ったが、値がさ株が日経平均を押し上げたものの、物色の広がりを欠いた。
・5月の既存店売上高が好調だったファストリ、東エレク・ソフトバンクGの3銘柄で日経平均を+200円程度押し上げた。
・自動車・保険など下げが目立つ業種も多く、市場では世界的なインフレや景気減速の警戒感が根強いとの声があった。
・「OPEC+」が原油増産で合意にも関わらず、原油価格の上昇が続くのも重荷だった。
●2.日本株:米国株に対して堅調ながら、基本、米国株連動は強い
1)直近の日本株の上昇率は、米国株に比べて弱い。これは、日本株が弱いのではなく、米国株の急落に対する自律反発の強さのためである。
2)外国人の先物動向を見ると、最近の日経平均の上昇に関連して外国人の買越しが目立った。なお、反対に国内勢が売越に転じていた。ところが、6/3には外国人合計で売越・国内勢買越しに転じたので、今週の外人先物売買に注目したい。
3)日本株は、強弱感はあるものの米国株に連動することに、変わりはない。
●3.企業動向
1)アドバンテスト 半導体試験装置の伊「クレア社」買収(時事通信)
2)トヨタ 開発中の「水素エンジン車」、市販目指す方針明らかに(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・6506 安川電機 業績好調
・3182 オイシックス 業績好調
・4473 三洋化成 業績堅調
・6594 日本電産 業績好調
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