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ホモ・サピエンスの石器における道具技術進化、その要因を解明 名古屋大
過去の人類史では様々な人類が出現してきたが、現存するのは5万年前頃に分布拡大したホモ・サピエンスのみである。その原因については未解明な部分が多いが、解き明かす鍵の1つとされているのが、石器などの道具技術である。
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特に、3万年前頃の上部旧石器時代前期において石器が小型化したことが知られており、当時の人類の技術進化に大きな影響を与えた可能性がある。名古屋大学の研究グループは1月28日、その要因を遺跡調査によって明らかにしたと発表した。
今回の研究では、ホモ・サピエンスがユーラシア大陸へ拡散する出発点となった中東のヨルダンで遺跡調査を実施。出土した石器資料の表面粗さについて、測定を行った。石器の材質は、これまでの考古学研究では、異なる遺跡間では肉眼や触覚による特徴で評価が行われることが多かった。そのため材料工学で用いられるような定量的な評価を適用したことが、今回の研究における新規性の1つである。
その結果、上部旧石器時代前期の遺跡から出土した石器は、表面が滑らかで透明度の高い石材の割合が高いことが判明。また石材の変化に伴って、石器の小型化も進行していたことが確認されている。この要因として、滑らかで透明な石材は小型石器の製作に適していたことが挙げられている。また逆に、前の時期の大型石器が製作できるほど大きな原石が多くなかったことも、要因の1つであると研究グループは述べている。
今回の研究から、旧石器時代のホモ・サピエンスが、石器の形態や技術に合わせて石材を選択していたことが示唆された。小型石器の利点としては、石材消費の節約や道具装備安定性の向上などが挙げられている。このことから、ホモ・サピエンスが非常に柔軟な技術行動をしていたことが伺い知れる。また、表面粗さによる定量的な評価の手法自体も、他の石器資料の調査へ適用が期待される。
今回の研究成果は1月13日付の「Archeological Research in Asia」誌のオンライン版に掲載されている。
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