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ネットのセキュリティ強化、新型暗号の選定が大詰め NTT方式は世界標準になれるか?
スーパーコンピュータとして名高い「富嶽」ですらも1万年は掛かると言われた計算を、量子コンピュータが「僅か3分20秒で計算した」と19年秋に発表したのが、米グーグルの研究チームだった。
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圧倒的な計算スピードを備えた量子コンピュータが、実用化されるのは31年頃と考えられている。世界中の研究機関で国運を掛けた研究が必死に進められているので、実用化の時期が多少早まるとの観測もある。
量子コンピュータが実用化されると、ネット通信の暗号方式は一瞬にして丸裸になる恐れがある。現行の暗号系は、因数分解の計算に多大の時間が掛かることを前提に成立している。逆に言うと、時間さえ掛ければ現行の暗号を解読することは可能なのだが、解読に何百年も掛かるということは現実問題としては「解読不可能」ということになるので、チャレンジャーはいない。
ところが、スパコンの富嶽でも解読するのに1万年掛かる前提が崩れてしまうと、コンピュータセキュリティが崩壊してしまう。特に金融界は取引の大部分を、RSA暗号や楕円曲線暗号等で守られているデジタル通貨やモバイルバンキングに、暗号システムの安全性が担保されなくなると、個別銀行の安全性はおろか金融システムそのものの安全性が脅かされることになる。
このため、米国立標準技術研究所(NIST)では新たな暗号方式を選定して、24年までに新しい規格とする作業を進めてきた。新型暗号の公募は16年12月に開始され、17年12月には第1次候補として50弱が選定され、19年1月にはその中の20弱が第2次候補となった。20年7月には最終候補として4つの新型暗号に絞られた。そしていよいよ2022年1月中にも新型暗号が決定される可能性がある。
最終候補として残っているのは、(1)NTT、米クアルコムグループ(2)IBM(3)1425年に設立されたベルギーのルーベン・カトリック大学(4)米イリノイ大学だ。(1)~(3)は数学の格子問題を応用し、(4)は数学の符号問題を応用していると言う。
NTTとクアルコムの方式が優れているのは、専用の装置を必要としないことだ。おまけに第3者の利用に対して特許料を求めないことを表明している。現行方式からの移行障壁を減らして、周辺ビジネスで稼ごうという計算だ。
NISTが選定した新型暗号は米政府が採用し、米政府と取引のある事業者は新型暗号の採用を迫られることになる。日の丸技術を米政府が採用し、日本の事業者も追随する形が一番望ましいのは言うまでもない。
なお、量子コンピュータへの対抗手段には防衛や医療などのように、より機密性の高い情報分野での使用が想定される「量子暗号」技術もある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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