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bZ4X(プロトタイプ車両)(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]
トヨタ自動車が10月29日に仕様を公開したEV「bZ4X」(ビーズィーフォーエックス)には、不本意ながらEV戦線に巻き込まれたトヨタ自動車の面子が渋く光る。
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1つ目は、1回のフル充電で走行可能な距離が、最長約500キロメートルという航続距離だ。日産のアリアが430~610キロメートル、米テスラのモデル3が448~580キロメートル、独VWのID.3が348~548キロメートルであるのに対して、bZ4Xは460~500キロメートルと公表されている。
凡そ同程度の航続距離を誇る4車種だが、航続距離の幅がアリアで180キロメートル、モデル3なら132キロメートル、ID.3には200キロメートルもの幅があるのに対して、bZ4Xは40キロメートルと最も少ない。
自家用として利用される車が常に高速道路のように、効率的な走り方ができることはほとんどない。航続距離の幅が、快適なハイウエイも渋滞の路面を走ることも見込んでいるから、bZ4Xの下限値460キロメートルは一番現実的な乗り方に近いと感じさせられる。まさにトヨタの真骨頂といったところだろう。
創成期のEVの泣き所は、バッテリーの激しい経年劣化だ。車両価格の大きな割合を占めるバッテリーが年数の経過と共に容量を大幅に減らすことが、EVを購入した人の大きな悩みと言われて来た。
bZ4Xに搭載されるバッテリーは、10年後でも90%の容量を維持する耐久性を目標に開発されている。10年後に90%の容量が確保されているということは、一般的なユーザーがマイカーとして保有している期間中に、バッテリー交換の必要に迫られることがないのはもちろん、その後の利用も期待出来ることから、中古車としてダンピングの憂き目に遭うことはなさそうだ。
バッテリーにまつわるウィークポイントは「発火事故が多い?」ということだ。内燃機エンジンが事故でもないのに突然炎上したという事例は寡聞にして聞かないが、EVには時折耳にする事例だ。スマホのバッテリーにも同様の発火事故は耳にするため、リチウムイオンバッテリーの忌避出来ない宿命かも、と感じさせられて漠とした不安は否めない。だがbZ4Xには、バッテリーの電圧や温度を多重監視するシステムが採用されて、発熱の兆候を検知し最悪の事態は回避される。
2つ目はハンドル操作がステアリング軸を通して、タイヤに伝えられ角度を変える言う現在のシステムから、ステアリング軸をなくして電気信号がタイヤの角度を変える「ステア・バイ・ワイヤ」(SBW)システムが、トヨタ車で初めて採用されたことだ。
ステアリング軸がなくなることでハンドルが格納出来たり、「ハンドルの形状は円形」というイメージに囚われることがなくなり、異形ハンドルも可能となる。SBWシステムではステアリングギア比の変更が自由になるから、小さなハンドル操作でタイヤの操舵角を大きくすることも可能になり、ハンドルを1回転するという操作は思い出話になる。
開発競争がし烈な「自動運転レベル3」と共通する安全思想を持つSBWシステムは今後不可欠な技術とされる。
3つ目は次世代電動車の核心とも言われる「eAxle」(イーアクスル)を、トヨタ車として初めて採用したことだ。バッテリーの性能が声高に語られるEVだが、EVモーターの駆動システムのダウンサイジングをローコストで実現するために、モーター、インバーター、減速機(ギア)を一体化したシステムがイーアクスルだ。
大きく3つの分野の技術が統合されたシステムであるため、その分野を得意とするメーカーや自動車部品メーカーが開発にしのぎを削っている。
EVのためにトヨタが面子を掛けた「TOYOTA bZ」シリーズは、7車種が25年までにラインアップされる。EVへの初動が遅いと揶揄されるトヨタが満を持して送り出すbZ4Xに、世界のライバル各社から大きな注目が集まるのはトヨタの宿命とも言える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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