N・フィールド上場廃止に接し、創業者:野口氏の意思継続を切に望む

2021年9月16日 16:50

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 6月18日、東証1部のN・フィールドが上場廃止となった。国内投資ファンド:ユニゾン・キャピタル系のCHCP-HNのTOBにN・フィールドが同意した結果だった。

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 同社は特異な福祉関連企業。2003年に野口和輝氏によって創業された。私が介護関連専門紙の依頼で同社を取材したのは、定かではないが野口氏が社長職を退く(2016年)前だから14-15年頃だったと思う。妙に感動したのを覚えている。野口氏は、元精神科担当の看護士。何故脱サラ起業したのかという問い掛けに、「精神疾患の人は、治療後(退院後)こそケアが大事」と、精神疾患者専門の訪問医療看護事業を立ち上げた原点を語ってくれた。

 いま改めて、野口氏の言わんとしたことを調べてみた。日本うつ病学会は、こんな情報を発信している。「うつ病の再発率は(治療後)1年以内が30%。5年以内が40-60%」。そして「完全回復率は40%に満たない」と。

 野口氏は「精神疾患を患った人は“病意識が乏しい”のが現実。つまり退院後の服薬や定期的通院に問題が起こりやすい」とした。故に(身内の負担or適当な身内との同居が不可)を勘案し住まいの提供をし、訪問看護の枠組みを執ったのである。

 住居提供は契約住宅会社に委ねている。訪問看護は、主治医の指示が前提になる。需要が多いことは、今年6月末時点で「全国に訪問看護拠点213」が整備され「月間の利用者1万5000人」に及ぶことからも明らか。N・フィールドでは「ファンドの資金を活かし在宅医療サービスの拡充を図る」としている。

 現に今21年12月期も前期同様に10の拠点開設が予定されている。新型コロナウイルス禍の中「影響緩和傾向」(同社)とはいえ、上昇対応策を駆使した上での展開は評価に値する。野口氏の創業理念が脈々と受け継がれていることを痛感する。

 手元の四季報(夏号)では既に、N・フィールドの頁はない。が、春号では【上昇】の見出しで前期の60%強の営業増益に続き今期も、「13%強の営業増益(8億7000万円)」と印している。「無借金経営で内部留保13億6000万円余りを有しながら何故」と、TOB受け入れに「?」を投げかける向きも少なくない。だがこの間、収益に上下の揺れがあったことも事実。

 ファンド名のユニゾンは、「同じ旋律を奏でる」という意味の音楽用語とか。ユニゾン・キャピタルのHPには、『多彩な楽器が重なり合って美しい一つの旋律を奏でるように、投資先企業と「調和」を保ちながら、企業価値向上をサポート・・・経営者・従業員・株主が価値観を共有し共通の目標に向かって力を合わせることにより、企業は必ず新しい成長を実現することが出来る。これが信条』と謳っている。

 今後の動向を、しかと見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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