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簡単に生成可能な生分解性ゲルを木材から開発 JAEAら
研究の概要(画像:日本原子力研究開発機構の発表資料より)[写真拡大]
水分を含む柔らかい「ゲル素材」。日本原子力研究開発機構(JAEA)は10月30日、木材から採取したセルロースナノファイバーからゲル素材の開発に成功したと発表した。
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■環境にやさしいバイオ素材「セルロースナノファイバー」
植物の細胞壁の約半分を占めるセルロースは、紙の原料であるパルプにも多く含まれる化合物だ。パルプから作られる強度のある繊維素材「セルロースナノファイバー」は、微生物で水と二酸化炭素に分解できる「生分解性」のあるプラスチックへ応用できるなど、環境にやさしいバイオマス素材として注目されている。
セルロースのようなバイオマス素材を原料としたものとして、生分解性ゲルがある。3次元の網目状の構造をもつゲルは弾性をもち、コンタクトレンズなどに応用されている。とくに生分解性ゲルは環境浄化剤や医療材料への応用が期待されているが、強度や「成型性」と呼ばれる割れを生じることなく形を作り上げられる特性をもつかという点で課題があった。
■氷の凍結現象が開発のヒントに
日本原子力研究開発機構、先端基礎研究センター、東京都産業技術センター、東京大学の研究グループが新しい生分解性ゲルを開発するために着目したのが、氷が凍結する現象だ。
氷が凍結することで物資の構造が変化する。研究グループは、凍らせたセルロースナノファイバーにクエン酸を溶かすことで、新しい生分解性ゲルの開発に成功した。このゲルは2トンの圧縮にも耐えられるだけでなく、さまざまな3次元形状に成型できるという。
研究グループが開発した生分解性ゲルは、環境浄化用の吸着剤としても有用な可能性が高いという。このような優れた特性から、環境浄化用途だけでなく、緩衝材やソフトロボットの材料、再生医療用の材料など、幅広い応用が期待されるとしている。
研究の詳細は、国際学術誌ACS Applied Polymer Materialsにて10月30日付にオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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