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人民元デジタル化の新たな進展と今後の展望(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:06JST 人民元デジタル化の新たな進展と今後の展望(1)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している孫 啓明教授の考察を2回にわたってお届けする。
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一、中国のデジタル人民元は、世界の通貨システムの革新をリードし、困難を打ち破りながら発展する
2020年4月16日、長らく計画されていた中国中央銀行のデジタル人民元は、ついに前例のない実現と進展を迎えた。これは、主権国家の通貨をベースとした世界初のデジタル通貨となる。最初の試験地域として蘇州が選ばれた。工商銀行、農業銀行、中国銀行、建設銀行の四大国有銀行は、デジタル通貨の方式で、政府職員の給与の一部を支払うことになる。すでに中央銀行デジタル通貨(DC/EP、Digital Currency / Electronic Payment)のデジタルウォレットをインストールし、テスト完了した。予定では、5月の給与の通勤手当の50%は、デジタル人民元という方式で、デジタルウォレットに支払うことになる。今後2~3年で、中国で流通しているM0(現金)の30%から50%は、中央銀行のデジタル通貨に置き替えられ全国での普及が期待されている。
2020年4月3日、全国通貨金銀及び安全保障業務テレビ会議において、トップダウンの設計を強化し、法定デジタル通貨の研究開発を着実に推進することが提案された。現時点で中国人民銀行は、すでに中央銀行が設計・保証・署名し、完全な暗号通貨を確立した。そして、デジタル通貨発行プールとデジタル通貨商業銀行プールという2つプールを設立し、通貨発行の認証、登録、そしてビッグデータ分析と3つのセンターを設立した。これらのプールとセンターが中央銀行暗号デジタル通貨の発行管理とサービスを担当している。中央銀行の長期的戦略目標としての人民元のデジタル法定通貨の研究開発は、重大な意義がある。中国の学者の多くは、中国人民銀行が発行するデジタル法定通貨は、民間企業のデジタル通貨、例えばFacebook社のリブラより発展の余地があり、世界の通貨システムに広範囲かつ革命的な影響を与える、と考えている。
二、人民元法定デジタル通貨の導入は、世界の通貨システムの変革に対して、画期的な意義と長期的な影響を与える
表面的に見ると、デジタル人民元の発行は、そこまで驚くべきものではなく、ただ紙幣の発行をデジタル通貨に置き替え、紙幣(M0)を発行、印刷、保管、流通するコストを節約することだけに過ぎない。しかし、人民元のデジタル法定通貨を発行する戦略的意義は、決してこれだけではないことは、明らかである。
1. バタフライ効果
周知の事実として、現在の世界通貨体系は、ドルが覇権を握っている。近年では、世界の中央銀行が保有する外貨準備におけるドルのシェアが減少し続けているが、依然として62%のシェアを占めており、独占している。歴史的に見ると、ドル覇権に挑んできた円とユーロは、ドルに完膚なきまでに叩きのめされた。旧ソ連は冷戦終結の後、民営化が始まり、ドル/ルーブルのレートは1991年の1ドル0.9ルーブルから、2000年の1ドル28000ルーブルに暴落し、そして1992年ロシアの年間インフレ率が2,000%に達した。石油のためにアメリカと対立したベネズエラは、2018年のインフレ率は80,000%を超え、物価は1ヶ月ごとに倍増し、自国通貨ボリバル・ソベラノも96%値下げする羽目になった。世界は長い間ドル覇権に苦しめられている。
世界諸国における中央銀行が保有する外貨準備の人民元の割合は2%しかない。人民元という小さなさなぎは、デジタル化によって蝶となる。そして、もし世界諸国はこれを機に独自のデジタル通貨を導入し、そのか弱い翅を羽ばたかせれば、それがもたらす「バタフライ効果」は必ず世界の通貨システムにハリケーンのような衝撃的影響を与えることになるだろう。
来るべきデジタル通貨戦争に備えるために、世界中の国々がブロックチェーン技術を積極的に研究している。2017年9月、日本ソフトバンクグループとアメリカの通信業者が、キャリア・ブロックチェーン・スタディー・グループ(CBSG)を設立した。同じ2017年9月、スイスのスイスコム社もブロックチェーン技術サービスを主要業務とする子会社Swisscom Blockchain AGを設立した。2019年5月、インドのバーティ・エアテル社はIBMと提携し、ブロックチェーンベースのインドネットワークを建設した。2019年9月、アメリカのベライゾン社がブロックチェーンの上で仮想SIMカードを作成する特許を取得した。2019年10月、B2BブロックチェーンプロバイダーClear社がドイツテレコム社、ボーダフォン社、テレフォニカ社と提携し、ブロックチェーンに基づくデータローミング実験を行った。2020年1月、スペインのテレフォニカ社が現地のハイテクパーク協会(APTE)と協力し、スペインの約8,000社に対してブロックチェーン接続サービスを提供し始めた。2020年2月、ドイツテレコムが米T-Mobile US社、テレフォニカ社、Orange S.A.社、GSMアソシエーションと協力し、ブロックチェーン技術を通信業者間の通信プロトコルに応用する試験を行った。韓国KT社はクラウドに基づくBAASプラットフォームを開発した。もっともデジタル人民元に迫っているのはFacebookで、2020年4月16日、中国がデジタル法定通貨を発行するとほぼ同時に、リブラがスイス金融市場監督局(FINMA)に決済システムのライセンスを申請した。実際、多くの国と企業が、ブロックチェーン技術のエコロジー発展を探求し、促進し、ブロックチェーンの基盤となるプラットフォームを構築しているのは、デジタル通貨戦争に参加するためだ。
「人民元デジタル化の新たな進展と今後の展望(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く
写真:ロイター/アフロ
※1:https://grici.or.jp/《SI》
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