関連記事
太陽系外由来天体「オウムアムア」の誕生メカニズム 米中での研究
2017年に太陽系外から飛来した謎多き葉巻型天体オウムアムアは、既に太陽系から離脱する軌道に乗り、私たちから遠ざかっている。また、太陽系離脱後はペガサス座の方向に移動するものと見られている。
【こちらも】太陽系外から飛来した彗星「C/2019 Q4」、オウムアムア以来の発見
通常、太陽系内に存在する天体は楕円軌道を持っているのに対し、オウムアムアは双曲線軌道を持ち、太陽の引力に束縛されることなく恒星間を移動してゆく存在であり、従来このような軌道を持つ天体が観測されたことはなかった。
このオウムアムアがどのようにして誕生したのかについて、中国科学院・国立天文台のユンチャン氏と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のダグラスNCリン氏による研究論文が、4月13日にNature Astronomy誌で公開された。そこで今日はそのエッセンスについて紹介することにしたい。
まず彼らは、このオウムアムアが電波放射をしていないことや金属光沢を持たないことなどの理由から、知的生命体の創造物ではないことを主張している。というのも発見された当時には、太陽系外の知的生命体が送り込んできた偵察機ではないかというような憶測が、かなり出ていたからであろう。
オウムアムアのように、特定の恒星の引力に束縛されない存在を、科学者たちは星間物体と呼んでいる。一般的に星間物体は、太陽系の外縁にあるオールトの雲のような場所に由来するものと考えられており、その多くは彗星のように揮発性の物質から構成されているというのが通説であった。
だがオウムアムアはその常識を覆す様々な特徴を有していた。つまりこの天体の発見によって、科学者たちは星間天体に対する認識の大転換を迫られることになったのだ。今回公開された論文では、彗星とは異なる岩石状の星間天体の存在数が、この宇宙には100兆個もあると主張している。
このような岩石状の星間天体について、生成機構の一般的な理論を解明するため、彼らは恒星間天体の構造モデルを仮定し、コンピュータシミュレーションを実施した。その結果、オウムアムアのような恒星間天体は、例えば、木星のような非常に引力の大きな天体の付近を通過する際に、潮汐力が働き、シューメーカー第9彗星が木星に衝突した時のように、バラバラに引き裂かれることが判明したという。
つまり、最初は球体をしていたかもしれないが、様々な質量の大きな天体のそばを通過するたびにバラバラに引き裂かれ、葉巻状の形になったのではないかというのだ。このような星間天体の破片が実は宇宙空間にはたくさん存在しており、たまたま人類がそれを21世紀になるまで、発見できなかっただけなのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
スポンサードリンク