BCGの予防接種が新型コロナに効いている? (2-1) 状況証拠では”ビンゴ”だが!?

2020年4月8日 12:32

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 新型コロナウイルスによる死亡者数を人口100万人当りで換算すると、次のようになる(worldometer調査による世界標準時4月8日午前2時48分更新の情報、以下同)。スペイン300人、イタリアは283人、オランダ123人、イギリス91人、スウェーデン59人、イラン46人、アメリカ39人に対して、ポーランド3人、日本は0.7人だ。この数字に驚くような格差があることが、世界の注目を集めている。

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 一般的には感染者数が注目されるが、日本の感染者数は独自の哲学に基づいて算出されているため、単純な比較が無意味であることは周知されている。これに対して“感染による死亡者数”は万国共通の基準であり、比較が可能な唯一の数値である。

 現在、その強い因果関係が注目されているのが、BCGの予防接種だ。BCGとは人に対する毒性がない牛から生成された結核菌を接種することで、体内に結核に対する抗体を形成する生ワクチンのことをいう。表現を変えると、毒性のない結核菌に感染させて本物の結核菌に対抗できる免疫を持たせる予防接種だから、本来的には新型コロナウイルスとは全く関係がない。

 これまでも、BCGワクチンには本来期待されている結核の予防効果だけでなく、オフターゲット効果と呼ばれる副次的な効果があると認められている。膀胱がん(表在性の上皮内がん)の標準治療として行われるBCG膀胱内注入療法には、健康保険が適応される。標準治療とはエビデンス(証拠・根拠)が認められている最良の治療という意味である。他に、喘息や寄生虫などにも有効と唱えている研究者もいるようだ。

 薬物の予期しない作用は、概ねネガティブに「副作用」として表現されることが多い。BCGに関しても局所的な炎症や発熱といった軽微な事例から、リンパ節炎や骨髄炎、結核性潰瘍といった重篤な副作用の報告例もある。

 こうした目先の副作用を大ごとに受け止めて、BCGの接種を忌避する「反ワクチン運動」が展開されて来た欧州では、BCGの接種を廃止した国が多い。前述した国の中で、ポルトガルはBCGを推奨している国に該当し、スペイン、イタリア、スウェーデン、ドイツはBCGワクチンの接種義務化から撤退している。

 加えてアメリカは、過去にBCGワクチンを義務化したことがない国であるため、死者数の動向が大いなる関心を集めている。

 現時点ではBCGワクチンと新型コロナウイルスによる死亡者数の因果関係に、科学的な裏付けはない。しかし、国境を接しているポルトガル(死者345人)とスペイン(1万4,045人)で死者数に桁違いの差があり、同様にアイルランド(210人)とイギリス(6,159人)、ノルウェー(89人)とスウェ-デン(591人)、ポーランド(129人)とドイツ(2,016人)のように、隣接しているため地政学的な相違が認められない国家間で、失われる命の数に大きな差があることは事実なのである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

続きは: BCGの予防接種が新型コロナに効いている? (2-2) 因果関係は解明できるか?

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