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「犬が犬を食べる」とは?犬にまつわる英語イディオム(4)
前回、前々回と犬にまつわる英語のイディオムを紹介したが、まだまだたくさんある。それだけ犬は、長年にわたって我々の生活や文化に深く関係してきたということだろう。
【こちらも】「夏の犬の日々」とは?犬にまつわる英語イディオム (3)
ふだん何気なく使われている表現も、その起源を辿ると新たな視点が生まれるものだ。今回は、競争社会を象徴する「dog eat dog」と、ある俗信を意味する「hair of the dog」という2つのイディオムを取り上げたい。
■Dog Eat Dog
「dog eat dog」、「dog eat dog world」とも言うが、厳しい競争社会や弱肉強食の状況を表すイディオムだ。現代では、ビジネスや社会的な競争の激しさを形容する際によく使われるが、この表現の由来には意外な歴史的背景がある。
この表現の起源は、古代ローマのラテン語のことわざ「canis caninam non est(犬は犬を食べない)」にあるとされる。
このフレーズはもともと、同族間で互いに争わないという意味を持っていた。しかし18世紀になると、このフレーズから否定を表す「non」が抜け落ち、「犬が犬を食べる」という逆の意味に変わってしまった。ここから時間を経て、「dog eat dog」という現在の形で定着したのである。
なお19世紀に、ダーウィンの進化論やトマス・ホッブズの思想が台頭したことも、「dog eat dog」が広く普及した要因であろう。
これらの新しい理論は、世界を限られた資源を巡って絶え間ない争いが繰り広げられる厳しい環境として描写したため、その状況を的確に表す言葉として多用されるようになったと考えられる。
使用例
・In the corporate world, it's dog eat dog, and only the strongest survive.
(企業社会は弱肉強食の世界で、最強の者だけが生き残る)
■Hair of the Dog (That Bit You)
「hair of the dog(that bit you)」とは、2日酔いを治すために迎え酒をすることを指すイディオムだ。「毒をもって毒を制す」という発想で、実際に効果があると信じて実践する人もいる。
このイディオムの由来をたどると、中世ヨーロッパの迷信にたどり着く。当時、犬に咬まれた際の治療法として、その犬の毛を傷口に貼るとよいと考えられていた。
犬に咬まれた傷は、それを咬んだ犬の毛が治癒を早めると信じられていたらしい。当時は狂犬病が広く蔓延しており、その致死性も高かったことから、こうした迷信が生まれたのだろう。
もちろん何の根拠もない迷信だが、この迷信が時を経て形を変え、2日酔いに関する俗説として現代の「hair of the dog」というイディオムになったわけだ。
使用例
・After last night’s party, he was feeling awful, so he tried a hair of the dog to recover.
(昨夜のパーティーで2日酔いになった彼は、治そうとして迎え酒を試した)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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