東大、リチウムイオン電池の「不可逆容量」削減する技術開発 高容量可能に

2020年2月24日 08:27

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シリコン負極とLiMNC正極を使った二次電池の充放電曲線。数字は充放電サイクルの回数を示しており、実線が加圧電解プレドープしたシリコン負極、破線がプレドープしないシリコン負極となっている。(画像: 東京大学の発表資料より)

シリコン負極とLiMNC正極を使った二次電池の充放電曲線。数字は充放電サイクルの回数を示しており、実線が加圧電解プレドープしたシリコン負極、破線がプレドープしないシリコン負極となっている。(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 電気自動車やドローン、IoT機器の普及に向けてリチウムイオン電池のさらなる高容量化が求められている。しかし、初回の充放電時に負極上で副反応が進行し「不可逆容量」が発生することで容量が設計より小さくなるという課題があった。東京大学の研究グループは21日、その不可逆容量を削減する「加圧電解プレドープ」と呼ばれる技術を開発したと発表した。

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 今回の加圧電解プレドープによって、約20%の不可逆容量を削減することに成功したという。

 リチウムイオン電池の初回の充放電では、負極上で電解質が分解し被膜を形成する現象が発生する。このときに電解質中のリチウムイオンが消費されてしまうため、2回目以降の充放電では容量が減少してしまう。ここで減少してしまう容量のことは「不可逆容量」と呼ばれている。

 不可逆容量は現在一般的に負極に用いられている黒鉛だけでなく、高容量負極として期待されるシリコンでより顕著に発生する。そのため、シリコン負極の実用化を進めるためにも不可逆容量の削減は重要な課題とされてきた。

 不可逆容量の削減に対する取り組みとして、電解プレドープと呼ばれる方法は多くの研究グループによって行われてきた。電解プレドープは、初回の充放電によって消費される分のリチウムイオンを、電池組み立ての前に負極と反応させる方法である。あらかじめリチウムイオンと反応させた状態で組み立てることで、初回の充放電時に副反応が発生しにくくなり不可逆容量を減少させることができる。

 しかし、従来の電解プレドープ技術はリチウム金属と電気化学的に反応させる手法を取ってきたため、反応に多くの時間を要していた。そのため工業的な技術として利用することは現実的とは言えなかった。

 そこで東京大学の研究グループは、電解プレドープ中に加圧することで、プレドープが短時間で進行することを見出した。加圧電解プレドープを行った負極を用いた電池は、プレドープをしなかった電池と比較して約20%の不可逆容量を減らすことができた。また、加圧電解プレドープによって電池の長寿命化が達成できることも示されている。

 加圧電解プレドープによって、高容量なシリコン負極が実用化されリチウムイオン電池のさらなる高性能化が進むと期待される。

 今回の研究成果は、21日付のScientific Reports誌のオンライン版に掲載されている。

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