自衛隊・元統合幕僚長 岩崎茂氏インタビュー これから日本は韓国とどう向き合うべきか vol.2【フィスコ 株・企業報】

2019年12月17日 16:03

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記事提供元:フィスコ


*16:03JST 自衛隊・元統合幕僚長 岩崎茂氏インタビュー これから日本は韓国とどう向き合うべきか vol.2【フィスコ 株・企業報】
◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 Vol.8−「反日」が激化する 韓国の「いま」と「今後」 4つのシナリオ』(9月26日発売)の特集「自衛隊・元統合幕僚長 岩崎茂氏インタビュー」の一部である。全5回に分けて配信する。


自衛隊機へのレーダー照射問題、元徴用工問題、韓国に対する輸出管理など、日韓関係を冷やす出来事が立て続けに起こり、国交正常化以来、両国の関係は最悪の状態だ。一方、急速に台頭してきた中国、核開発を進める北朝鮮と東アジア情勢は不安定さを増している。日本は国益を考えると、韓国とどう向き合うべきなのか。かつて自衛隊制服組のトップを務めた岩崎茂氏に聞いた。


■韓国軍の稚拙な抗弁 ますます冷える日韓関係

韓国側は当初、「P-1からの音声が雑音で聞こえなかった」と主張していた。しかし、韓国側が反論のために報道したビデオには、はっきりと自衛隊のP-1からの音声が入っていた。もし韓国側が自分たちの言い分の正しさを証明したいのなら、音声を編集して切ってしまうことも簡単にできたはずだ。まったく理解できない弁解である。

その後、韓国側は「P-1が低空飛行をして我々に脅威を与えた」と言い出した。でも、その言い方だと、言外に「脅威を感じたからロックオンした」というニュアンスにもとれる。これもあまり説得力のある説明ではない。その後も韓国側は「日本側の低空飛行が問題だ」を繰り返すのみであり、防衛省は韓国軍との交渉はこれ以上の進展が望めないと判断し、以降、両国関係が冷えたままである。

その後、シンガポールで毎年行われている「アジア安全保障会議」で両国防衛相会談が行われたが、両国間の関係改善の報道はなされていない。2019年6月末のG20でも両国首脳会談は行われなかった。ただ、韓国の戦略的重要性を考えると現在の状態は好ましくない状態であり、いろいろな機会を使い関係改善が望まれるところである。

■徴用工問題における韓国の国際的な非常識

日韓関係を冷え込ませているもうひとつの懸案事項は、徴用工問題における1965年の日韓請求権協定への違反だろう。「個人の請求権は消滅していない」と韓国の司法は認め、韓国政府は、「政治は司法に介入することはない」との姿勢で司法判断をそのままにしていると述べている。

しかし、国際的な条約や協定は基本的に国内法や制度等の上位にあるものである。他国または国連などの国際機関と約束したことは、たとえ国内法上問題があったとしても守らなければならない。むしろ国内法を変更する必要があると考えられる。仮に他国などと約束をしたあとに、何らかの不具合が生ずるならば、まずはその約束を破棄するための話し合いを相手国とすべきである。

韓国には、司法だけの主張なら日本に対しては言ってもいいだろうというような若干の甘えのようなものがあると感じる。このような甘えは、韓国側が都合の悪いときにときどき使う手であると感じることがこれまで何度かあった。日本も国際的な、かつ常識的な観点からしっかりと我が国の立場を主張しなければならない。

■尖閣問題で日本に対してレアメタルを禁輸した中国

こうした日韓関係の冷え込みもあるなか、東アジア情勢では中国の動きにも注視する必要がある。過去を振り返ると、日本が太平洋戦争に踏みきったのも、米・英・オランダに対日石油輸出を全面禁止されたことが引き金のひとつになった。エネルギーの確保、つまり経済活動が波及したわけだ。ここ20年を考えても、グローバリゼーションが進み、各国が経済的な相互依存を強めている。太平洋戦争のときと比べて、経済要因が安全保障に与える影響は大きくなっている。

こうした状況のなかで、中国は強大な経済力を背景に、東シナ海、南シナ海のみならずインド洋、そしてヨーロッパに至る内陸国の国々に対し、さまざまな揺さぶりをかけている。

たとえば、2010年に、尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた海上保安庁の巡視船に、中国籍の漁船がわざとぶつかってくる事件が起こった。このとき日本政府は漁船の船長を逮捕した。中国政府はすぐさま当時の丹羽宇一郎・在中国日本大使を呼びつけ、船長・船員の即時釈放を要求した。

そして、中国は日本に対してレアアース(希土類)、タングステン、モリブデンといったレアメタル(希少金属)の輸出を停止した。スマートフォンやハイブリッド車をつくるうえで必要な素材であるレアメタルの輸出を止めることで、日本に嫌がらせをしたわけだ。

しかし、科学技術力に優れる日本は、レアメタルの代替品を官民一体となって開発し、一気に脱レアメタルを進めた。その結果、中国のレアメタルに過度に依存する構造から脱却し、2012年にはレアアースの輸入量が前年比でほぼ半減している。

(つづく~「自衛隊・元統合幕僚長 岩崎茂氏インタビュー これから日本は韓国とどう向き合うべきか vol.3【フィスコ 株・企業報】」~)

【岩崎茂 Profile】
1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。
※岩崎の「さき」は「崎」の異体字(「山」辺に「立」に「可」)《HH》

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