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血液1滴でアルツハイマー病の診断ができる可能性 名古屋市立大らの研究
アルツハイマー病患者の脳へのアミロイドβの沈着は、症状が現れる20年ほど前から始まっている。このアミロイドβに対する治療は、アルツハイマー病の症状が出てから行っても効果があがりにくいといわれており、発症前の段階で診断することが必要になってくる。
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今回の研究では、アルツハイマー病患者の血清中で減少しているフロチリンというタンパク質が、早期診断を可能にすることが明らかになった。フロチリンによるこの検査は少量の血液で行えるため、安価で安全な検査方法として利用できることが期待される。
研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科の道川誠教授らのグループが、大分大学の松原悦朗教授、福祉村病院の橋詰良夫愛知医科大学名誉教授らと共同で行った。
高齢化が進む中、認知症の患者数は増加してきている。アルツハイマー病は物忘れの症状から始まり、認知機能が低下していき、最終的には日常的な動作までが失われていく病気である。この根本的な治療法はまだ確立されておらず、現時点で日本国内で行われているのは現状を維持するための治療だ。
しかし根本的な治療法の開発が待たれており、アミロイドをターゲットにしたワクチン療法などが開発されつつある。このような治療法は、アルツハイマー病を発症してからでは効き目が十分でない場合が多く、症状が現れる前の軽度認知障害(MCI)などの状態で診断し、治療を開始する必要がある。
現在脳へのアミロイドβの蓄積を検査する方法としては、アミロイドPET検査がある。この検査はアミロイドの蓄積状態を調べることができるが、非常に高価である。他に髄液検査があるが、脳髄液をとることは患者にとっても負担が大きいものとなっている。
今回の研究で注目されたのが、フロチリンというタンパク質で、剖検時の脳室に存在していた。フロリチンは細胞膜上に浮かぶ脂質ラフトの構成分子であり、神経から放出される物質にも含まれている。培養した脳細胞にアミロイドβを与えるたところフロチリンの量が減ったことで、研究グループはこのタンパク質に注目した。
するとPETによる検査でアミロイドβが蓄積していると診断されたアルツハイマー病患者は、健常者と比べて血液中のフロリチンが低下していた。また軽度認知障害(MCI)の患者のうちアミロイドβが陽性のものは、陰性のものより血清中フロチリンが低下していることがわかった。さらにPET検査によるアミロイドβ沈着の程度と血清フロチリンの量は逆相関していた。
これらの結果から、血清フロチリン量の測定が、アミロイドPET検査の替わりとしてアルツハイマー病の診断に用いていくことが可能であることが示された。この検査は血液1滴あれば可能であるため、簡単で安全、安価なアルツハイマー病早期発見のための検査方法として用いられていくことが期待される。さらにこの測定法は、新たに開発された治療薬の効果判定にも利用できる可能性もあるだろう。
研究の成果は10月29日、Journal of Alzheimerʼs Diseaseに掲載された。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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