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超音速旅客機の夢、遥か(1) 立ちはだかる「音の壁」は女性の「腰のくびれ」で乗り切った
ブーム・テクノロジーによる超音速旅客機のイメージ。(画像: JALの発表資料より)[写真拡大]
日本航空(JAL)は2017年12月、アメリカのブーム・テクノロジー社に1,000万ドル(約11億円)を出資し、同社が製造する超音速輸送機に関して、20機の仮契約を結んだ。これは、超音速飛行の一定数の需要が太平洋航路にあると見ての行動だ。これまで超音速旅客機がコンコルド以外実現せず、コンコルドさえ退役してしまったことを不思議に思うこともあるだろう。
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しかし、超音速飛行は軍用機では当然となっており、また、50年ほど前なら「熱の壁」もありえたのだが、チタン合金はゴルフクラブにも使用されるほど一般化した。技術的には超音速巡航も夢ではないが、どうしたことであろうか?
■1.「音の壁(ソニックブーム)」は「女性の腰の括れ」で乗り切った
超音速飛行には「音の壁」が存在した。しかし、現在でも音速を超えることは大きな衝撃波を生じさせることに変わりはない。それで超音速飛行は、現在でも陸地上空では禁止されている。1947年10月14日ベル・X-1が超音速に達した。この飛行は現在の宇宙旅行よりもはるかに危険であったことだろう。アメリカの試験飛行機「X」シリーズの最初の機体はお粗末の一言だった。その形態は「弾丸」を模したもので、特に超音速飛行に適した理論があったわけではなかった。
音速に近付くと衝撃波が発生して抗力が急増し、機体が異常な振動(バフェッティング)を起こして分解してしまうのだ。ゼロ戦などでも急降下すると、激しく振動し空中分解してしまう。この抵抗に打ち勝って音速の壁を超えるために、当時は高出力エンジンで強引に挑むばかりだったのだ。その後、エリアルール(断面積法則)が用いられるようになり、音速付近では威力を発揮した。この断面積法則を利用して設計されたのが、コンコルドだった。これは、飛行機の断面積が急激に変わるのを押さえると抵抗が減少することを利用したものだった。そのためマッハ2級の飛行機までは、翼の交わる付近の胴体を絞り込んだ設計となっていた。
それはちょうど「女性のプロポーション」と一致しており、自動車のスタイリングにも取り入れられ、「速さ」をアピールしたりした。その例がフォード・ムスタングなどであり、「コークボトルライン」とも呼ばれ、現在のマツダの各車のデザインに取り入れられており、普遍の速さをアピールするデザインとなっている。
もう一つ、コンコルドのデザインで目を引くのは「デルタ翼」だ。速そうに見えるデザインだが、欠点は速度が遅い着陸時などでは「迎え角」を大きく取る必要があり、パイロットの視界を奪ってしまうのだ。そのため、コンコルドでは、着陸時に機首を折り下げて視界を確保するようになっている。
JALが出資したというブーム・テクノロジー社の実験機「XB-1(実機の1/3スケール)」の写真を見ると、その視界確保の工夫が分からない。XB-1と名付けられているのはなんとも言えないが、「XB-70ヴァルキリー」を連想するように付けられているのかもしれない。このXB-70は、マッハ3を超える予定で開発された機体で、「熱の壁」を超えていた大型戦略爆撃機だった。ヴァルキリーもまた、デルタ翼機で機種の視界の確保に工夫があった。しかも、カナード翼を持つ機体でありながらである。おそらくは、XB-1も何らかの工夫をしてくることだろう。その意味で、まだ1/3スケールの実験機であることが、実用化に向けた道のりが険しいことを感じさせる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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