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「しきさい」、観測データの提供開始 JAXAが説明会開催(2/2)
気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)のイメージ(C)JAXA[写真拡大]
一方「しきさい」の観測データを活用する予定である、海洋研究開発機構(JAMSTEC)統合的気候変動予測研究分野、立入郁(たちいり かおる)分野長代理、気象庁地球環境・海洋部環境気象管理官付、福山幸生(ふくやま ゆきお)化学データ同化技術開発推進官、ウミトロンの藤原 謙(ふじわら けん)代表取締役は、「しきさい」の観測データに期待すること等について説明した。
【前回は】「しきさい」、観測データの提供開始 JAXAが説明会開催(1/2)
JAMSTECの立入分野長代理は、『気候モデルの観点から見た「しきさい」への期待』について説明。この場合の気候モデルとは、大気、海洋、陸面の生態系をいう。様々なプロセスが入ることで、将来の気候予測には、大きな不確実性の幅が出来る。エアロゾルが雲を変質させる効果は、特に不確実性が大きく。また、TCRE(単位累積炭素排出量に対する気温上昇)の生態系の不確実性では、気候モデルに約3倍の幅がある。これらの予測の不確実性を「しきさい」の観測データで低減したいという。また、アルゴリズム開発者との連携も重要で、長く安定してデータ供給されることでさらに有用性が大きくなるとしている。
気象庁の福山技術開発推進官は、『「しきさい」観測データの黄砂情報への利用について』説明。黄砂、エアロゾルの日本周辺や東アジア域の観測に関しては、これまで打ち上げられてきた静止気象衛星「ひまわり8・9号」により、空間的に偏りなく状況を監視出来る技術が確率出来たという。予測については、「ひまわり」と「しきさい」のデータ同化を用いて数値モデルと組み合わせることにより、精度を高めることが出来る。「ひまわり」は高解像度な画像を高頻度に得られるが、静止衛星のため地球の反対側の映像を得ることが出来ない。また高度36000キロメートルに対し、「しきさい」は高度800キロメートルと低く、相対的に高解像度のデータを入手出来ることから、相互補完的な役割を果たせすことを期待しているという。
ウミトロンの藤原代表取締役は、『「しきさい」観測データによる持続可能な水産養殖への貢献について』説明。近年、アジアを中心とした中間所得層の増加や、欧米の健康志向から魚の需要が拡大することなどで、世界的に水産養殖の生産業が急増を続けている。養殖業が持続可能な発展を遂げるには沿岸域の海洋環境を知る必要があり、安定的な生産拠点を築いていくためには、遠隔でのコントロールやモニタリング技術が必要となる。しきさいからの観測データを活用して、こういった持続可能な水産養殖の発展に貢献したいという。具体的には、生産現場の課題であるコスト削減などの解決や、IT・AI・宇宙技術の現場導入などに取り組むという。
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