土星の環、いずれ消滅か? NASAの研究

2018年12月21日 09:08

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土星探査機カッシーニによって撮像された土星 (c) NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

土星探査機カッシーニによって撮像された土星 (c) NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute[写真拡大]

 米航空宇宙局(NASA)は18日、無人惑星探査機ボイジャー1号と2号からのデータに基づくと、土星の環がいずれ消滅するという研究成果を報告した。土星の磁場の影響で、環が重力により氷の雨として土星に降るのが原因だという。

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■土星の輪が発生した原因も諸説あり

 土星を象徴するのが、氷の粒子によって構成されるリングだ。土星が環によって形成されたのか、それとも土星が誕生したのち環を獲得したのかについて、科学者を長年悩ませた。最新の研究は、土星誕生後に環が発生したという後者の説を採用する。

 土星のリングの起源については諸説あるものの、土星を公転する氷でできた小さな衛星らが衝突して、環が形成されたというのが有力な説だ。土星を通過する小惑星や彗星により重力にゆらぎが生じ、軌道の変化した衛星同士が衝突したからだという。

■ボイジャーによる偶然の発見がヒントに

 土星の環から発生する氷の雨のヒントは、NASAによって打ち上げられた無人惑星探査機ボイジャーの観測データに基づく。ボイジャー1号と2号は、木星や土星などの惑星を探査する目的で、1977年に打ち上げられた。

 ボイジャー2号は1981年、電荷を帯びた大気(イオン層)やリングの密度の変化、北半球の中緯度周辺を囲む暗い帯など、土星を観測した。これらの現象は、土星に降る氷の雨と関係なさそうに思われる。ところが1986年に、暗い帯と土星の巨大な磁場の形状とがリンクしており、土星の環から電荷を帯びた氷粒子が目に見えない磁場線に向かって流れ、水が土星の大気へと降り注いでいるという研究報告がなされた。環から発生した水分が、土星の特定の緯度周辺に現れ、反射光により暗い帯として生じるという。

■氷の雨が環を消滅させる

 NASAの報告によると、土星の環から生じる氷の雨は、30分でオリンピック競技で使用されるプールの量に相当するという。そのため約3億年後には、土星の環は消滅すると予想されるという。

 また2017年に土星の環への突入に成功した探査機カッシーニによりと、土星の環は1億年未満で生涯を終えるという。土星の年齢が40億年超であるのと比較すると、環の年齢は短い。

 研究の詳細は、惑星科学誌Icarusにて17日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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