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良い人は公正に振る舞うと赤ちゃんも考えている 京大の研究
研究のイメージ。(画像:京都大学発表資料より)[写真拡大]
世の中には善人と悪人がいて、善人は公正な存在であり、悪人は不公正な存在である。―その真偽はともかく、赤ん坊でもそのように世界を理解している―。以上の事実を、京都大学の板倉昭二文学研究科教授らの研究グループが、イタリア、スウェーデンの研究グループとの共同研究によって明らかにした。
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心理学の古い理論に、タブラ・ラサと呼ばれるものがある。白い石版、つまり何も書かれてない状態の石版という意味で、善悪の観念などはヒトの成長とともに学習・習得されるものであり、生まれたばかりの赤ん坊はまっさらな心しか持っていない、というものである。
心理学の歴史について語っていけば長くなるのだが、ともあれこれは今日ではほぼ否定されている。実際には、例えば善と悪を理解する認知的能力について、非常に早期の段階でもヒトにはそれが備わっているらしいとする傍証が数々上がっているのである。
さて、今回の研究は、赤ん坊が善人と悪人の行動についてどのように予測を立てているかについて、提示サンプルに対する注視時間を指標として調べるという方法を取った。
具体的には、まず生後11カ月の赤ん坊を集め、他人に対して援助的な行動を取る人間(善人)と、他人に対して望外的な行動を取る人間(悪人)とを、事前に提示したサンプルによって学習してもらう(便宜的に人間と言っているが実験デザイン上使われているのは図形である)。
しかるのち、今度は、それぞれの人間が、イチゴをほかの人間に分けるというサンプルを提示した。結果として、善人が不公平な分配を行ったときにおいては、注視時間がはっきりと長くなることが判明した。なお、悪人が公平な分配をしたときについては特に時間は変わらなかった。つまり、赤ん坊は善人は公平な分配を行うものと考えており、それに反する事実を目の前に示されたとき、予測と反するので注意を引かれるのだろうと考えられるのである。
なお、研究の詳細は、スイスの国際学術誌「Frontiers in Psychology」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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