JAXA、PM2.5も測定する温暖化ガス測定衛星「いぶき2」を年度内に打ち上げ

2018年8月16日 20:50

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「いぶき2」

(C)JAXA 「いぶき2」[写真拡大]

●世界初だった温暖化ガス観測衛星「いぶき」の後継機「いぶき2」

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2009年に打ち上げた世界初の温暖化ガス観測衛星「いぶき」(GOAST)の後継機「いぶき2」(GOAST2)を2018年度内に打ち上げる。

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 「いぶき」は約100分で地球を一周し、地球表面のほぼ全域にわたって二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを計測。計測データは世界中誰でも利用することができ、地球規模の温暖化ガス計測に貢献してきた。設計寿命は5年で、2018年には新たな衛星を打ち上げる必要があった。

●観測制度は数倍に 新たに一酸化炭素やPM2.5を計測

 「いぶき2」は「いぶき」に与えられたミッションを引き継ぎ、その精度を上げる。さらに、一酸化炭素を新たに計測対象として追加している。一酸化炭素を計測することにより、工業活動や化石燃料消費などで出される、人間が発生源を作り出している二酸化炭素の排出量を推定できる。

 さらに近年大きな健康被害の元になっているPM.2.5(超微粒子状物質)やブラックカーボン(黒色炭素)も計測する。PM2.5は2.5マイクロメートル以下の空気中の浮遊粒子のことで、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器疾患の原因になるといわれている。現在日本のPM2.5は定点観測により観測された地点の数値をもとに、風の流れなどを考慮し数値を推定している。「いぶき2」では全地球規模でモニタリングできるため、飛来状況を高い精度で広範囲にわたり把握することができるという。

●パリ協定早期実現へ向けて、世界の観測データと連携

 世界でも温室効果ガスを観測する衛星の打ち上げが続いている。2014年にはNASA(アメリカ航空宇宙局)が軌道上炭素観測衛星2号「OCO-2」を、中国も2018年5月に大気観測衛星「高分五号」(Gaofen5)を打ち上げた。また、欧州では「Carbonsat」を2019年頃に打ち上げを予定している。

 「いぶき2」の計測データは各国の衛星データと連携することにより、より信頼性を向上させ、各国の排出量の正確な把握につなげることができる。そのことにより、パリ協定による温暖化ガス削減目標を達成させるための重要な指標となる数値が 得られると期待されている。

 「いぶき2」はほとんど完成しており、8月11日にJAXAの筑波宇宙センター(茨城県つくば市)で公開された。打ち上げ日はまだ未定だが、2018年度中にはH-IIAロケットで種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げられる予定だ。(記事:norijun・記事一覧を見る

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