関連記事
90億光年の彼方、史上最も遠い星「イカロス」の観測に成功 東大と東北大
ハッブル宇宙望遠鏡により撮影されたイカロスの画像。左は銀河団 MACS J1149+2223におけるイカロスの出現位置を示している。右はイカロス付近のハッブル宇宙望遠鏡画像の拡大図。 2011 年(右上)には観測されていなかったイカロスが 2016 年(右下)の観測で出現していることがわかる。(credit: NASA/ESA/P. Kelly)[写真拡大]
東京大学と東北大学は、ミネソタ大学の主導する国際共同研究チームに参加し、ハッブル望遠鏡による観測によって、地球から90億光年離れた渦巻銀河の中にある星「MACS J1149+2223 Lensed Star 1」の観測に成功した。この星は研究チームによって「イカロス」という名を与えられた。
【こちらも】太陽系外惑星を新たに15個発見、水がある可能性も 東京工業大の研究
イカロスはこれまでに人類が観測したうちで最も遠くにある星である。現代の最高性能の望遠鏡をもってしても、地球より数十億光年という規模の距離にある星を、銀河全体としてならばまだしも単独で観測するのは通常の方法では不可能だ。過去、単独での星の観測は、1億光年以内が限界であったため、イカロスの観測はその大幅な記録更新となる。
今回それを可能にしたものは、重力レンズと呼ばれる自然の集光現象である。重力レンズは一般相対性理論から導き出されるものであるため、アインシュタインが提唱したものとして有名だ。これを利用したことによって、イカロスの明るさは元の明るさの2,000倍以上の感度で観測された。
また、今回の研究は、単に遠くにある星を観測対象にすることができるようになったというだけではなく、宇宙の謎であるダークマターに関して、大きな示唆をもたらすことになった。理論的予測によると、ダークマターがどのような物質から構成されているかによって、星の増光パターンは大きく変化する。
たとえばダークマターが太陽の数十倍程度の質量のブラックホールから構成されているという(現在では否定的な)説があったが、今回の観測データの解析によると、この説はもはや完全に棄却することが可能であるという。
なお、本研究は、Extreme magnification of an individual star at redshift 1.5 by a galaxy-cluster lensと題され、Nature Astronomy誌に論文掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
スポンサードリンク