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鉄道ダイヤ職人「スジ屋」の熟練ノウハウはAI化出来るのか
正確で緻密な鉄道ダイヤを作ることも、「職人」のなせる技である。[写真拡大]
鉄道ダイヤと云えば、熟練の腕を持つ職人、通称「スジ屋」の領域だった。あと2本、1時間の枠に列車を入れる、所要時間、停車時間、配車の空き具合、すべて条件は与えられたものの中で答えを出さなければならない。鉄道の時刻表を眺めて想像力に耽る種類のマニアは、そういった苦闘と絶妙の列車配置の跡を眺め、そこにさまざな物語をさらに付け加えて悦んでいたのである。
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「ダイヤグラム」と呼ばれる、斜めに何本も線が入った図を見たことがある人もいるだろう。横軸を時刻、縦軸を路線と距離として、列車の1運行を1本の線で引く。この線を「スジ」と呼ぶ。スジの傾きは列車の速度を現すが、この傾きが数種類あるものほど列車の種別(特急、快速、普通など)が多く、スジ屋の活躍する場所になるのは今も昔も変わりはない。ただ、いまの鉄道ダイヤは多種多様化しており、また、加速減速性能の優れた車輛(特に、VVVF、インバータ車輛)の投入により、かつてのダイヤ以上に動きがスピーディになった分だけ、スジ屋の仕事も高度になったと云えるかも知れない。
では、いまの鉄道ダイヤは具体的にはどのように組まれているのだろうか?あわよくば人工知能にすべて任せたいくらいの仕事なのか、必ず人が必要な仕事なのか。
鉄道ダイヤを装置図面と同種のものと捉えるのであれば、機器類と電気系統に大きく種別がわかれる。個別に手描きで行っていた「製図作業」を画面に向かって行うように変わり、ファイルが保存されるようになったことで、機器展開がカスタマイズされるようになったのと同じである。機器類の設計変更が行われるたびに個々の設計者が分担して図面を書き直し管理する必要が出て来るように、鉄道ダイヤもダイヤ変更のたびに個々のダイヤ職人が「スジ」と呼ばれる列車毎の運行ダイヤの線を引き直す必要があるということだ。
それでは、次世代の運行システム設計・編成の仕事はどうなるものだろうか。これは装置設計と機器類の改編、変更管理の仕事が劇的に変わった場合と本質は一緒かも知れない。運行しながらだが、不具合を検知して瞬時に最適なダイヤに変更する、そして、最終確認は必ず人が行う仕組みが欠かせない。この点、共通項があると考えられるのが、工場の生産管理システムと、もう一つは物流管理システムである。生産管理との共通視点からであれば設備不具合対応と対策、物流管理の共通視点であれば事故防止の仕組みとシステム化であろう。
システム構築・アーキテクチャはAIに行える社会になったとしても、不具合対応や事故防止を考えれば、今はまだ人の知恵と知識は欠かせない。スジ屋の仕事も、決して絶やさず次世代につなげて行くべき職人仕事の一つと考えられるのではないだろうか。(記事:蛸山葵・記事一覧を見る)
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