理研、海馬から大脳新皮質への記憶転送の仕組みを解明

2017年4月21日 07:38

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記事提供元:エコノミックニュース

理化学研究所脳科学総合研究センターと理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの研究チームは、日常の出来事の記憶(エピソード記憶)が、海馬から大脳新皮質へ転送されて、固定化されるメカニズムの一部をマウスの実験を通して明らかにした。

理化学研究所脳科学総合研究センターと理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの研究チームは、日常の出来事の記憶(エピソード記憶)が、海馬から大脳新皮質へ転送されて、固定化されるメカニズムの一部をマウスの実験を通して明らかにした。[写真拡大]

理化学研究所脳科学総合研究センターと理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの研究チームは、日常の出来事の記憶(エピソード記憶)が海馬から大脳新皮質へ転送されて、固定化されるメカニズムの一部をマウスの実験を通して明らかにした。同研究では、記憶の痕跡が保存される「エングラム細胞」を標識・操作することで、学習時には既に、大脳皮質の前頭前皮質でエングラム細胞が生成されていることを発見した。また、前頭前皮質のエングラム細胞は、海馬のエングラム細胞の入力を受けることにで、学習後徐々に構造的・生理的・機能的に成熟することを見出した。これに対して、海馬のエングラム細胞は、時間経過とともに活動休止、脱成熟することが判明。大脳皮質記憶想起の際に必要な神経回路が時間経過とともに切り替わるという、従来から考えられていた記憶転送モデルが裏付けられるかたちとなった。

 初期段階での記憶の想起に海馬の働きが重要ということはよく知られており、海馬に蓄積されたエピソード記憶が大脳皮質へ転送されることで、記憶の想起で活用する脳領域が数週間後には大脳皮質に切り替わるこが、動物を用いた海馬の損傷実験や人の症例研究によりわかっていた。また、記憶の細胞レベルの固定化については、マウスやショウジョウバエの実験にて、カルシウムイオンの働きで転写調節因子(CREB)が活性型となり、記憶固定化に必要な遺伝子発現を誘導するといったメカニズムが明らかになっていた。しかし、こうした心理学者や脳科学者らにとって一般的となっている「記憶固定化の標準モデル」について、記憶が貯蔵される細胞を見分ける手法がなかったため、海馬から大脳皮質へ記憶の転送の際の神経回路メカニズムの詳細について、ほとんどわかっていなかった。

 今後は、古いエピソード記憶が意味記憶へと変化するメカニズムについて、神経回路レベルで検証することや、意味記憶を符号化する神経細胞群の存在を明らかにすることが期待されている。(編集担当:久保田雄城)

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