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東芝が打つ再生への戦略は
東芝に残された道はあるのだろうか?(c) 123RF[写真拡大]
経営危機にある東芝は、半導体メモリー事業を入札で完全売却することを発表していた。この分野で東芝は世界第2位のシェアを誇っており、また、技術や人材が外国に流出することを避けたいとする経団連や経済産業省からの要請により、売却先は日本企業に照準を合わせていた。しかし、入札に応じた日本企業はなく、4月1日付でメモリー事業の分社化を決定し、「東芝メモリー」が発足したのだった。
東芝としては、この東芝メモリーの株式を2017年度末(2018年3月31日)までに完了し、債務超過の解消を目指している。ここで、最近の東芝に関連する一連の動きを見てみたい。
4月6日には、台湾の半導体メーカーの申し立てにより、米国際貿易委員会(ITC)が東芝のフラッシュメモリーについてに特許侵害の調査を開始した。この申し立てが認められる可能性は少ないと言われているものの、仮に認められた場合、東芝のフラッシュメモリーを搭載した製品は米国へ輸出・販売ができなくなる可能性があり、東芝にとってはマイナス要素が加わった形だ。
その様な中で、東芝は主要部門ではないテレビ事業の売却を発表した。少しでも巨額損失の穴埋めをしたいとのようだ。
こうした一連の動きとは別に、新しい戦略も打ち出した。東芝は、東芝メモリーに対する出資を複数の日本企業に呼びかけているという。4月7日時点で、富士通と富士フィルムホールディングスが出資を検討しているとも言われている。過去に東芝メディカルシステムズの買収で富士フィルムと競り合ったキヤノンは名乗りをあげていない。
別の動きとして、民間投資ファンド「エフェシモ(旧村上ファンド系と言われている)」が東芝の株式を追加取得している。官民系ファンド「産業革新機構」も資金援助を検討しているようだが、エフェシモのように投資目的で出資するわけではない。出資に対し厳格なルールが存在する。だが、金額は桁違いだ。
次に、東芝は4月5日、「電力系統監視制御システムおよびその周辺技術の海外事業展開に関して戦略的な提携に合意」したと発表。提携合意したのは東芝の他に、東京電力パワーグリッド、NTTデータ、マカフォー、東光高岳、日本工営だ。6社は、事業展開に向けて東南アジアやアフリカで市場調査を開始する。
残された最後の優良事業とも言うべきメモリー事業を売却し、東芝が再生へと打てる戦略は残されているのかだろうか。
現在、東芝社員の士気が低下していると言われている。士気を上げるには、社員の提案を聞くことにあるのかもしれない。東芝でしかできない事、東芝でやりたかった事だ。提案さえできなかった社員もいるに違いない。大企業とベンチャー企業の違いがここにある。
東芝には業績の好調な中小企業やベンチャー企業へも目を向けて欲しいところだ。そういった会社は自社アイディアの製品を必ずひとつは持っている。新しい展開は、あらゆる可能性に耳を傾けることに始まる。それを分析し、前向きに取捨選択をする。東芝の本質ははエンジニアだ。協力を呼びかければ、中小企業やベンチャー企業からの挙手があるかもしれない。
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