肥満の進行に関与する遺伝子を特定―抗肥満薬の開発につながる可能性=OIST・高橋明格氏ら

2015年12月23日 23:32

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肥満に伴って遺伝子Cnot7とTobの量が増加し、Ucp1遺伝子の量は減少する。痩せた人ではCnot7とTobの量が少なく、Ucp1の量が多いと言える。(写真提供:OIST)

肥満に伴って遺伝子Cnot7とTobの量が増加し、Ucp1遺伝子の量は減少する。痩せた人ではCnot7とTobの量が少なく、Ucp1の量が多いと言える。(写真提供:OIST)[写真拡大]

  • 論文筆頭著者の高橋明格博士(左)と、細胞シグナルユニットを率いる山本雅教授(右)(写真提供:OIST)

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の高橋明格博士らは、ある特定の遺伝子が代謝を下げ、脂肪を熱エネルギーに変換し燃焼させる過程を妨げることで、肥満を進行させることを発見した。

 肥満は糖尿病、高血圧、心疾患、癌など生活習慣病の危険因子であり、世界的な問題となっている。しかし、これまでに安全で効果的な治療法は確立されておらず、対策は健康的な生活習慣や運動、食事制限などの個人努力に限られていた。

 今回の研究では、マウスの肥満に伴い、遺伝子Cnot7とTobの発現が増えることを新たに発見し、逆にこれらの遺伝子を欠損したマウスは、通常のマウスと比べて同じ量の高カロリー食を食べても、肥満になりにくい傾向を示した。また、Cnot7とTob遺伝子欠損マウスの脂肪組織を調べたところ、脂肪を熱エネルギーとして燃焼させるUcp1遺伝子の発現量が顕著に増加していることが明らかになった。

 研究メンバーは、「今回の研究で分かった脂肪の熱エネルギーへの変換抑制経路を適切に阻害することで、脂肪を燃えやすくし、抗肥満薬の創成につながる可能性があります。実際にこの経路の阻害剤を探索する研究も行われており、いくつかの候補化合物が得られています。今後の臨床応用に向けて、さらなる検証に取り組む必要があると思います」とコメントしている。

 なお、この内容は「Cell Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Post-transcriptional Stabilization of Ucp1 mRNA Protects Mice from Diet-Induced Obesity」。

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