脳活動から人が予測したシーンを解読することに成功―京大・石井信氏ら

2015年12月10日 20:50

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今回の研究の概要を示す図(京都大学の発表資料より)

今回の研究の概要を示す図(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の石井信教授・鹿内友美大学院生らのグループは、迷路ゲームに取り組むときの脳活動から、次に見えてくるシーンの予測を読み取ることに成功した。

 私たちは、職場や家などの目的地へ向かう時、「もう少し行くと右手にコンビニが見える」「その先にポストがあって」というように、やがて出現するシーンを思い描きながら移動している。

 今回の研究では、マス目状の迷路の中で前方視野外にあるマス目が壁であるか通路であるかを回答する空間移動を伴うゲームに取り組んでもらい、実験参加者が思い浮かべている次のシーンを、スパースロジスティック回帰法を用いて脳活動から読み取った。

 その結果、海馬を含む領域ではなく、前頭葉内側部と頭頂葉で、シーン予測に特化して読み取ることができることが示された。このうち、前頭葉内側部・上頭頂小葉では、実験参加者の予測が間違っているとき、迷路構造と合致した正解のシーンではなく、間違ったシーンに対応する脳活動パターンを示していた。

 つまり、脳活動から、客観的事実とは異なる、主観的な「思い込み」を読み取れたことを示している。さらに、脳活動から読み取った予測を迷路上に配置していくことで、実験参加者が記憶している地図の復元を行ったところ、実験に用いた3種類の地図のいずれでも7割以上のマスで実際の地図と同じ構造であることがわかった。

 研究メンバーは、「本研究では、壁と通路しかないシンプルな迷路を用いました。より複雑なシーンやシーン以外へと対象を広げることで、多様な情報を脳活動から読み取る技術の足がかりになると期待しています」とコメントしている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Decoding the view expectation during learned maze navigation from human fronto-parietal network」。

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