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ヒトが顔を「見る」ことの意味は成長につれて変化する―京大・明和政子氏ら
アイトラッカーを用いたチンパンジー成体(左)とヒト12か月児(右)の実験風景(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の明和政子教授らの研究グループは、ヒトが他者の顔へ注意を向けるときの特徴と、その発達プロセスを明らかにした。
ヒトとチンパンジーは、生後すぐから他個体の顔(目)を反射的に検出し、持続的に見つめる。しかし、成長するにつれて、ヒトの乳児はよく顔を見るが、チンパンジーは行為に含まれる(操作している)物体へ注意を払うようになる。
今回の研究では、生後12か月と3.5歳のヒト乳幼児、ヒト成人、チンパンジー成体を対象に、アイトラッカー(視線自動計測装置)を用いて、他個体の行為を観察している間の視線の時系列変化を記録した。
その結果、ヒト成人は、行為の展開しだいで顔への注意を時系列的に変化させることが分かった。具体的には、予測どおり行為が展開していくと顔への注意は減少し、行為が予想に反して展開していくと顔への注意が高まっていた。一方、チンパンジーでは、どの条件でも顔へ注意を向けることはほとんどなく、行為の展開にそった変化も見られなかった。
さらに、ヒトの行為の見方の獲得時期について分析したところ、12か月児では条件を問わず顔を持続的に見ていたが、3.5歳児では、行為の展開にそって顔への注意を変化させるという、ヒト成人と類似した見方をし始めていることがわかった。
研究メンバーは、「ヒト特有の知性とは何か、それはいつ頃、どのようなプロセスを経て獲得されるのか。こうした問題を解き明かすことは、ヒトの本性を科学的に理解するための鍵となります。生物としてのヒトの心はどのように育まれるべきかを、科学的根拠にもとづき議論していきたいと思っています」とコメントしている。
なお、この内容は「PLOS ONE」に掲載された。論文タイトルは、「Humans but Not Chimpanzees Vary Face-Scanning Patterns Depending on Contexts during Action Observation」。
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