地球観測衛星「SMAP」のレーダー故障、未だ解決せず

2015年8月11日 21:04

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記事提供元:sorae.jp

地球観測衛星「SMAP」のレーダー故障、未だ解決せず(Image Credit: NASA/JPL-Caltech)

地球観測衛星「SMAP」のレーダー故障、未だ解決せず(Image Credit: NASA/JPL-Caltech)[写真拡大]

 米航空宇宙局(NASA)は8月5日、地球観測衛星「SMAP」のレーダー機器の不具合が未だ解決せず、引き続き問題解決にあたっていると発表した。

 この問題は今年7月7日に発生したもので、SMAPに搭載されている観測機器のひとつである合成開口レーダーに何らかの問題が発生し、動かせない状態に陥っている。

 これまでの分析で、レーダーの大電力増幅器(HPA)の低電圧電源に問題がある可能性が高いことがわかっているという。HPAはレーダーのパルスの出力を強くするための装置である。

 運用チームによると、これまでに得られた衛星の状態を示す信号(テレメトリー)が指し示している状態から、問題はこの低電圧電源内で起きており、原因としていくつかの候補が考えらているという。

 発表ではまた、これまでに行われた復旧の試みはすべて失敗していることが明らかにされた。ただ、その過程で貴重なデータが得られ、問題の状況や原因を理解するのに役立っているとしている。

 今後も引き続き分析と地上での試験を続け、早ければ8月下旬にも、再び復旧を試みるとしている。

 なお、もうひとつの観測機器である放射計は問題なく動いており、現在もデータを集め続けているという。

 SMAPは米航空宇宙局(NASA)/ジェット推進研究所(JPL)が運用する地球観測衛星で、地球全体の土壌に含まれる水分と、凍結している箇所の融解具合を見ることを目的としている。得られたデータは、天気予報や気候変動の予測の改善、洪水や干ばつといった災害の予防、農業の生産性の向上といったことに役立てられる。

 衛星は、直径6mの傘のようなアンテナを持つ、大変ユニークな姿をしている。このアンテナは合成開口レーダーと放射計の、2種類の装置の目と耳として機能する。合成開口レーダーとは、電磁波を地上に向けて照射し、反射して衛星に返ってきた信号を分析することによって観測する装置で、放射計は地表から出る電磁波の放射を計測する装置である。

 SMAP(「スマップ」と発音)という名前はSoil Moisture Active Passive(土に含まれる水分を能動的、受動的に観測)の頭文字から取られている。SMAPミッションは、もともとNASAで開発されていたESSPハイドロスという衛星が基になっている。ESSPハイドロスは2005年にNASAの予算削減が原因で中止されたが、その遺産を活用してSMAPが組み立てられた。

 打ち上げ時の質量は944kg。高度685km x 685km、軌道傾斜角98.1度の太陽同期軌道で運用され、8日ごとに同じ地点の上空を通過する。設計寿命は3年が予定されている。

写真=NASA。

■SMAP: SMAP Team Investigating Radar Instrument Anomaly
http://smap.jpl.nasa.gov/news/1244/

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