5000倍効率が良い火星のテラフォーミング方法 シカゴ大らの研究

2024年8月16日 09:51

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1976年6月にバイキング1号ーが撮影した火星表面画像 (c) NASA

1976年6月にバイキング1号ーが撮影した火星表面画像 (c) NASA[写真拡大]

 地球温暖化は人類が未体験レベルの自然災害をもたらし、数十年以内に地球に住めなくなるとの悲観論もある。火星への移住は夢物語ととらえられがちだが、実はその必要性はすぐそこまで迫ってきているのかもしれない。そんな状況の中、従来の方法よりも5000倍も効率の良い火星のテラフォーミング方法のアイデアが、シカゴ大学の研究者らによって公表された。

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 火星をテラフォーミングするアイデアは、数十年前に初めて発案され、現在も様々な研究がなされている。

 基本的に達成すべき課題は、(1)火星を温める。(2)大気濃度を高め地球に近い気圧を確保する。(3)火星の氷を溶かして液体の水として利用できるようにする、の3ステップに集約される。

 従来のアイデアは、火星に二酸化炭素やメタンガスなどを満たし、太陽熱による温室効果で温めるものだ。しかし火星の資源だけでは足りず、他から温室効果ガスを持ち込む必要があり、コスト面での難点があった。

 今回シカゴ大学が公表したアイデアは、従来マーズローバーによる観測で火星表面に多数存在が明らかになっている鉄やアルミニウムに富むダスト粒子を、適切な形状に加工。それを大気放出し、その粒子により太陽光を効果的に散乱させ、温度上昇をもたらすものだ。

 具体的には、ダスト粒子を数ミクロンオーダーの短い棒状に加工したものを、毎分30リットル持続的に火星表面で放出。現状マイナス60度程度の表面温度を、水が液体で存在できる10度レベルにまで上昇させられるという。

 これに必要なダスト粒子は数百万トンだが、従来のアイデアで必要とされる温室効果ガス量の5000分の1で、ダスト粒子は火星のものが使えるため高価な輸送コストも発生しない。しかもこのアイデアでは、数十年で水が液体で存在できるレベルにまで温度上昇可能だ。

 今回のアイデアは画期的だが、先に示した第1ステップのアイデアに過ぎず、第2ステップで人類が呼吸できるような大気圧にするには、まだまだ克服しなければならない課題も多い。なぜならば火星の大気圧は地球の1%未満という、希薄なものでしかないからだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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