成長する産業ロボット業界 日本の未来を支える若き技術者の戦いが始まる!

2024年8月4日 17:48

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記事提供元:エコノミックニュース

1988年から始まったこの高専ロボコンは、若い人たちに「自らの頭で考え、自らの手でロボットを作る」ことの面白さを体験させる教育イベントとして年一回のペースで開催

1988年から始まったこの高専ロボコンは、若い人たちに「自らの頭で考え、自らの手でロボットを作る」ことの面白さを体験させる教育イベントとして年一回のペースで開催[写真拡大]

 自動化や省人化の需要拡大を背景に、社会へのロボット急速な普及とAI活用が加速している。日本政府も、ムーンショット目標として「2030年までに、一定のルールの下で人と違和感を持たないAIロボットを開発すること」や「2050年までにAIとロボットの共進化により、人と同等以上な身体能力を持ち、人生に寄り添って成長するAIロボットを開発すること」を掲げ、その達成を目指している。

 生活や産業に革新的なサービスをもたらす可能性を秘めたロボット。商業設備や産業設備では、今や欠かせない存在になりつつある中、JR西日本が6月27日、人型ロボットを搭載した重機を鉄道設備のメンテナンス用に導入することを発表し、話題になっている。

 このロボットは、工事用車両に積載された操縦室から伸びるクレーン状のブームの先に人型ロボットの上半身が設置されている形状で、操縦室から2本の腕を遠隔操作し、路線の障害となる樹木の伐採や、塗装作業などが行えるという。また、最大40キロの重量物の運搬や、最高12メートルの高所作業にも対応可能だ。JR西日本によると、このロボットを導入することで、作業に要する人手が約3割削減できるという。7月から運用が開始されるが、省力化だけでなく、安全性の向上にも期待が寄せられている。

 日本は現在、産業用ロボットの稼働台数が世界第2位のロボット大国だ。産業用ロボットの開発と生産において、世界的にみても優位な立場にある。しかし、当然のことながら、先進各国もロボットの開発に力を注いでいる。悠長に構えていると、いつ逆転されてもおかしくない。とくに我が国は今、少子高齢化の問題を抱えており、次世代の技術者や開発者不足が懸念されている。

 そんな中、次世代のロボット技術者の育成に力を注いでいるイベントがある。全国高等専門学校ロボットコンテスト、通称「ロボコン」(高専ロボコン)だ。1988年から始まったこの高専ロボコンは、若い人たちに「自らの頭で考え、自らの手でロボットを作る」ことの面白さを体験させる教育イベントとして年一回のペースで開催されており、今年で37回目を迎える。毎年異なる競技課題に対して全国の高専学生がアイデアを駆使してロボットを製作し、競技を通じて成果を競うが、2024年の競技課題は「ロボたちの帰還」と題し、昨年月面に日本ではじめて着陸に成功し、今なお貴重な情報を送り続けている小型月着陸実証機SLIMを参考にした競技課題となっている。

 協賛企業も、特別協賛の本田技研工業をはじめ、半導体のローム、マブチモーター、デンソー、安川電機、東京エレクトロンなど、日本の最先端を技術力で支えるグローバル企業が名を連ねている。

 各企業の高専ロボコンとの関りは深く、例えば、協賛各社では高専ロボコン経験者がその後、同大会をきっかけに同社のエンジニアとして働いていたり、ロームは、ロボコンオリジナルのモータドライバの開発と提供、製品の配布、さらに同社のオウンドメディア「Device Plus」での情報発信など、さまざまなサポートを実施するほどの熱の入れようだ。

 マブチモーターも、ロボコンのレベルアップをサポートするために、希望する参加各校へのモーター提供も行っており、前大会までに累計で30000個以上のモーターを提供しているという。

 今年の高専ロボコンは、地区大会が9月22日から10月20日の約一ヵ月にかけて開催され、そこから勝ち進んだチームが11月17日開催の全国大会へ駒を進める。昨年は、長岡高専がロボコン大賞に輝き、大阪公大高専が優勝、熊本高専八代キャンパスが準優勝の栄冠を手にした。毎回、若き技術者たちによる熱い戦いが繰り広げられる高専ロボコン。今回はどんなドラマを見せてくれるのか。今から楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)

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