約43年ぶりに人類が目にする青く輝く地球の姿=人工衛星「DSCOVR」が撮影

2015年7月22日 14:07

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記事提供元:sorae.jp

約43年ぶりに人類が目にする青く輝く地球の姿=人工衛星「DSCOVR」が撮影(Image Credit: NASA)

約43年ぶりに人類が目にする青く輝く地球の姿=人工衛星「DSCOVR」が撮影(Image Credit: NASA)[写真拡大]

 今年2月に打ち上げられた人工衛星「DSCOVR」が撮影した、青く輝く地球の画像が、7月20日に公開された。

 太陽光が全体に当たった状態で撮影された地球の画像は、通称「ブルー・マーブル」(青いビー玉)と呼ばれている。世界で初めて撮影されたのは、1972年12月7日のことで、地球から約4万5000km離れたところを飛んでいた、「アポロ17」の宇宙飛行士によって撮影された。このときの画像は特に、定冠詞のTheを付けて「ザ・ブルー・マーブル」と呼ばれており、世界で最も多くの人の目に触れた写真だといわれている。

 その後、NASAの地球観測衛星が撮影した複数の画像を合成して作られた、擬似的な「ブルー・マーブル」はいくつか公開されたが、今回DSCOVRによって、約43年ぶりに、1枚の画像による完全な「ブルー・マーブル」が撮影された。

 この画像はDSCOVRに搭載されているEPIC(Earth Polychromatic Imaging Camera)というカメラによって撮影された。EPICは近赤外線から紫外線まで、10種類の異なる帯域の画像を撮影することができる。なお、この写真では、空気によって散乱した日光によって全体的に青みがかった色合いになっているが、現在画像処理でこれを取り除き、より見やすい画像になるよう、ソフトウェアの改良を行っているという。

 またDSCOVRは、常時「ブルー・マーブル」が撮影できる特殊な軌道に乗っていることから、今後も定期的に、新しい「ブルー・マーブル」の画像が公開され続けることになる。NASAによると、公開の開始は今年9月ごろを予定しており、毎日、撮影から12時間から36時間後に画像がアップされるという。

 現在、国際宇宙ステーションに滞在しているスコット・ケリー宇宙飛行士は、blogの中で「この画像は、私たちが皆、この宇宙、この太陽系、そしてこの地球に住んでいるということを思い出させてくれます。そしてまた、私たちが『地球市民』であるということも」と書き綴っている。

 また、アポロ11で月に降り立った宇宙飛行士の一人である、バズ・オルドリンさんは次のように語っている。

「この画像は、私がちょうど46年前の今日(7月20日)、月に降り立った日のことを思い出させてくれます。あの日、ニール・アームストロングと私が月の『静かの海』に立っていた間、奇妙なことに、私たちは1人ではないということを感じていました。あのとき、地球にいたうちの約6億もの人々が、テレビを通じて私たちが月を歩く様子を見ていたからです。

 私とニールは、私たちの青く輝く惑星を、月から見上げていました。それは宇宙の暗闇の中で静かにたたずんでいました。私たち2人が人類史上、最も地球から離れた世界にいた間というのは、単に月世界旅行の先遣隊を務めていただけに過ぎません。まさしく全世界は、あの素晴らしい旅を、私たちと共に歩んだのですから」。

 DSCOVRは米海洋大気庁(NOAA)と米航空宇宙局(NASA)が開発した衛星で、今年2月11日にファルコン9ロケットで打ち上げられた。DSCOVRはその後スラスターを噴射し、6月8日に地球から約150万km離れた、太陽・地球系のラグランジュ第1点に到達した。

 太陽・地球系のラグランジュ点とは、太陽と地球との間の引力が均衡している場所の一つで、その第1点は、太陽と地球との間の、地球の表面から約150万km離れた場所にある。太陽や地球との位置関係が常に同じになるため、太陽から地球に向けて飛んでくる太陽風の観測や、その太陽風の地球との相互作用の観測に適しており、また地球の昼の面を常に観測し続けることもできる。

 DSCOVRはもともと、1990年代に当時のアル・ゴア米副大統領の肝いりで始まった計画で、地球表面からのエネルギーの放射量やエアロゾル、オゾン、雲の動きなどを観測すること、そして青く輝く地球の写真を、ほぼリアルタイムで世界中に配信するというミッションを目的としていた。ゴア副大統領はトリアーナによって、常に最新の「ブルー・マーブル」を世界中に配信することで、環境問題や世界平和への意識を高めることを期待していたという。

 しかしこのような計画は税金の無駄遣いであるとの非難がなされ、また他に搭載される観測機器も、すでに今ある他の衛星からのデータで十分であるという声もあったことから、衛星はほぼ完成していたにもかかわらず、2001年に計画は中止されることになった。

 その後、衛星は保管され続けていたが、2009年にNOAAが資金提供を行い、太陽風の観測衛星「ACE」の後継機として、トリアーナ改めDSCOVRとして復活することになった。ミッションの主役はNASAからNOAAへ移り、観測機器などは変わらなかったものの、NOAAの要求に合わせて調整が行われ、新たに宇宙天気の観測を目的とした衛星として生まれ変わり、17年越しにして、ようやく打ち上げられることになった。

 現在は観測機器の試験などが進められており、今回公開された画像はその中で撮影されたものである。正式な運用開始は今年の夏ごろに予定されている。ミッション期間は5年が予定されている。

写真=NASA。

■NASA Satellite Camera Provides “EPIC” View of Earth | NASA
http://www.nasa.gov/press-release/nasa-satellite-camera-provides-epic-view-of-earth

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