ファルコン9ロケットの打ち上げ失敗、指令破壊信号は出されるも時すでに遅し

2015年7月1日 12:11

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記事提供元:sorae.jp

ファルコン9ロケットの打ち上げ失敗、指令破壊信号は出されるも時すでに遅し(Image credit: NASA)

ファルコン9ロケットの打ち上げ失敗、指令破壊信号は出されるも時すでに遅し(Image credit: NASA)[写真拡大]

 6月28日に起きた、ファルコン9ロケットの打ち上げ失敗事故について、米国の宇宙開発ニュース・サイトの『SpacePolicyOnline.com』や『Spaceref』などは29日、事故が起きた際に、安全のためにロケットの機体を破壊する「指令破壊」を行う信号が出されていたと報じた。

 指令破壊とは、いわゆる自爆装置とも呼ばれるもので、ロケットの飛行中に問題が起きた際に、人家のあるところなどに墜落して被害を出さないよう、機体を破壊すること目的としている。自爆装置はいっても、実際には爆発させるというよりは分解に近く、少量の火薬で機体を割り、推進剤を排出してロケット・エンジンを停止させることで飛行を中断、もしくはエンジンの火によって機体を燃やす、あるいは大気との抵抗によって破壊させるようになっている。このような指令破壊装置は、現代のロケットのほぼすべてに搭載されている。

 今回の事故直後の段階では、この指令破壊の信号が出された結果ロケットが破壊されたのか、それともロケット自ら自然に破壊に至ったのかについては、明らかにされていなかった。しかし『SpacePolicyOnline.com』や『Spaceref』などによれば、打ち上げ時の安全管理を担っていた米空軍の担当者が、事故当時、指令破壊のための信号を出していたことがわかったという。

 しかし、信号が出されたのは問題が起きてから70秒後であったことから、すでに機体は自ら空中分解しており、指令破壊信号は意味をなさなかったという。なぜ70秒も経ってから信号が送られることになったのかについては不明である。

 ファルコン9は米東部夏時間2015年6月28日10時21分(日本時間2015年6月28日23時21分)、フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍基地から打ち上げられた。しかし離昇から2分19秒(139秒)後、高度約40kmを秒速約1kmで飛行中に、何らかの問題が起き、機体は破壊された。

 現在、スペースX社や米航空宇宙局(NASA)、米連邦航空局(FAA)などが事故の調査に当たっているが、今のところ原因は不明で、スペースX社のイーロン・マスクCEOは自身のTwitterで、調査が難航していると明かしている。

 今回の打ち上げはファルコン9にとっては19機目、また現行型であるファルコン9 v1.1にとっては14機目であり、打ち上げ失敗は初めてのことだった。

 ファルコン9には、無人補給船の「ドラゴン」運用7号機が搭載されていた。ドラゴン補給船の打ち上げは9機目であり、やはり失敗は初めてのことであった。その船内には水や食料品のほか、ISSでの実験に使う機器や、超小型衛星、将来の宇宙船のドッキングに備えた新型ドッキング機構なども搭載されていたが、今回の失敗により、すべて失われることになった。

 ISSには現在も3人の宇宙飛行士が滞在しているが、米航空宇宙局(NASA)によると、現時点である物資だけでも、10月までは通常通り運用することができるとし、ただちに影響はないと発表している。また7月3日にはロシアの「プログレスM-28M」補給船が、8月16日には日本の補給機「こうのとり」5号機の打ち上げも予定されており、水や食料、酸素などについては随時、補給されることになる。

 また7月23日には、JAXAの油井亀美也宇宙飛行士らが搭乗する「ソユーズTMA-17M」宇宙船の打ち上げも予定されているが、今回の事故による計画変更などの影響はないとしている。

写真=NASA。

■Range Safety Destruct Signal Was Sent To Falcon 9, But Too Late
http://www.spacepolicyonline.com/news/range-safety-destruct-signal-was-sent-to-falcon-9-but-too-late

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