国立天文台など、リチウム元素を生成している天体を初めて観察することに成功

2015年2月21日 20:15

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新星爆発の想像図。新星爆発(古典新星)は白色矮星(図中央右側)と伴星(同左:太陽のような主系列星もしくはそこから進化した赤色巨星)からなる連星系で起こる爆発現象だと考えられている(国立天文台の発表資料より)

新星爆発の想像図。新星爆発(古典新星)は白色矮星(図中央右側)と伴星(同左:太陽のような主系列星もしくはそこから進化した赤色巨星)からなる連星系で起こる爆発現象だと考えられている(国立天文台の発表資料より)[写真拡大]

 国立天文台・大阪教育大学・名古屋大学・京都産業大学などによる共同研究グループは、2013年8月に現れた新星爆発において、リチウム元素が大量に生成されていることを発見した。

 ビッグバン直後の宇宙には、水素とヘリウム以外の重元素がほとんど存在していなかったが、星の内部や超新星爆発で合成されてきた。 水素・ヘリウムに次いで3番目に軽い元素リチウムも新星爆発によって生成されていると考えられていたが、これまでその証拠を観測で直接確認することはできていなかった。

 今回の研究では、すばる望遠鏡の高分散分光器 (HDS) を用いて、2013年の8月に発見された新星「Nova Delphini 2013」を精密に調査したところ、観測されたスペクトル中から4番目に軽い元素ベリリウムの同位体7Beの吸収線が発見された。このベリリウム同位体は53日の半減期で7Liに変わることが知られており、見つかった7Beは高速で周囲に吹き飛ばされていることも分かったため、ここから作られるリチウムは高温環境で壊れることもなく星間空間に飛散していくと考えられる。

 今後は、さらに多くの新星爆発を今回のように適切なタイミングで観測することによって、今まで大きな謎であった宇宙のリチウム進化の姿が明らかになると期待されている。

 なお、この内容は2月19日に「Nature」に掲載された。

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