H-IIAロケット、情報収集衛星レーダー予備機の打ち上げに成功

2015年2月1日 18:23

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記事提供元:sorae.jp

H-IIAロケット、情報収集衛星レーダー予備機の打ち上げに成功(Image credit: JAXA)

H-IIAロケット、情報収集衛星レーダー予備機の打ち上げに成功(Image credit: JAXA)[写真拡大]

 三菱重工と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月1日、情報収集衛星レーダー予備機を搭載したH-IIAロケットの打ち上げに成功した。情報収集衛星はすでに4機1セットの体制が整っているが、今回の予備機が稼動することで、より体制が強化されることになる。

 ロケットは2015年2月1日10時21分、鹿児島県の種子島にある種子島宇宙センターの吉信第1射点から離昇した。情報収集衛星の打ち上げであったため、事前に飛行プロファイルなどは公表されず、打ち上げの中継も行われなかったが、打ち上げから約1時間40分後の12時ちょうどに、三菱重工とJAXAは「打ち上げは成功した」と発表した。

 衛星の分離時刻などは公表されなかったが、太陽同期軌道への打ち上げであったことから、おそらく離昇からおよそ16分後辺りで分離されたものと思われる。また、投入軌道の詳細も公表されていないが、アマチュアの衛星ウォッチャーによって近いうちに特定されることになろう。

 情報収集衛星レーダー予備機は、内閣衛星情報センターが運用する衛星で、日本の安全保障や、災害時の状況把握に活用するため、地表の撮影を行うことを目的としている。情報収集衛星には電子光学センサー(高性能なデジタルカメラ)で地表を撮影する光学衛星と、合成開口レーダーを使って地表を撮影するレーダー衛星の2種類が存在する。光学衛星はレーダー衛星より地上の物体を細かく見分けられるが、撮影したい地域が夜だったり、あるいは上空に雲がかかっていたりすると撮影できない。レーダー衛星は、物体を見分ける能力は光学衛星より劣るが、夜間や天候が悪くても撮影することができる。

 情報収集衛星は、1998年の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)によるテポドンの発射実験を契機に導入が決定され、光学衛星2機とレーダー衛星2機の4機を1セットとして運用することを目指して構築が始まった。この4機1セット体制により、地球上のある地点を、1日に最低1回撮影することが可能となる。

 2003年3月28日に光学1号機とレーダー1号機が同時に打ち上げられた。しかし同年11月29日の光学2号機とレーダー2号機がロケットの打ち上げ失敗によって失われ、以降は2機同時ではなく、実運用機に関しては1機ずつ打ち上げられることになった。2006年に光学2号機が、2007年にレーダー2号機が、それぞれ改めて打ち上げられている。しかしレーダー1号機と2号機は共に、故障によって、設計寿命より早く運用を終えたと伝えられている。

 その後、2009年に光学3号機が、また2011年に光学4号機とレーダー3号機、そして2013年レーダー4号機が打ち上げられ、当初の予定から約10年遅れで、ようやく4機体制が揃うことになった。これらの衛星は、第1世代の光学、レーダーの1号、2号機よりも性能は向上しているとされる。

 またこれら以外に、その後打ち上げられる衛星の技術実証機として、2007年のレーダー2号機と一緒に光学3号機実証衛星が、また2013年のレーダー4号機と一緒に光学5号機実証衛星がそれぞれ打ち上げられている。

 現在軌道上には、光学3号機と光学4号機、レーダー3号機とレーダー4号機、そして光学5号機実証衛星の5機が配備されており、今回打ち上げられたのは、レーダー3、4号機が故障した時に備えた予備機となる。衛星の機能や性能などもレーダー3、4号機と同じで、地上にある1mの物体を識別できるという。なお、レーダー3、4号機が運用を終えた後に、今回打ち上げられた予備機が実運用機としての役割を引き継ぐのかどうかは不明である。

 H-IIAロケットは今回が27機目の打ち上げとなり、また6号機の失敗後、7号機以降から数えると、21機連続での成功となった。

 また今年度中(2015年3月末まで)には、情報収集衛星光学5号機の打ち上げも予定されている。H-IIAは昨年10月の「ひまわり8号」の打ち上げから、約2か月間隔での打ち上げを続けており、関係者らの忙しい日々は続くことになる。

(写真は2014年5月24日に行われた、「だいち2号」を載せたH-IIAロケットの打ち上げの様子)

■JAXA | H-IIAロケット27号機による情報収集衛星レーダ予備機の打上げ結果について
http://www.jaxa.jp/press/2015/02/20150201_h2af27_j.html

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