【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】週後半に重要イベントを控えているが、潮目変化で投資マインドは改善

2014年6月1日 13:22

印刷

記事提供元:日本インタビュ新聞社

(6月2日~7日)

■新興市場中心に中小型株先導

  来週(6月2日~6日)の株式・為替相場は、潮目変化で投資マインドが改善して堅調な展開となりそうだ。週後半の5日にECB(欧州中央銀行)理事会、週末6日に米5月雇用統計など海外の重要イベントを控えているため、米国10年債利回りと米国株の動向も睨みながら、株式市場では主力株に様子見ムードが強まる可能性もあるが、新興市場を中心に中小型株が先導する展開だろう。外国為替市場では重要イベントを控えて膠着感を強めそうだが、その後は材料出尽くしの動きに注意が必要だろう。

  前週(5月26日~5月30日)の日本株は、米国株が概ね堅調だったことや為替が小動きだったこともあり、前々週(5月19日~23日)後半に高まった潮目変化ムードが継続して堅調な展開だった。政府が6月中に取りまとめ予定の「骨太の方針」「新成長戦略」や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のリスク資産運用比率引き上げへの期待感も高まり始めた。

  週間騰落率で見ると日経平均株価は170円21銭(1.18%)上昇した。5月27日の取引時間中に1万4744円16銭まで上昇する場面があった。その後はやや上値が重くなり、週末30日は7営業日ぶりに反落して終値は1万4632円38銭だったが、4月7日(1万4808円85銭)以来の高値水準だった。TOPIXは20.97ポイント(1.78%)上昇して30日の終値は1201.41だった。5月22日から7連騰となり30日の終値は4月4日以来となる1200台を回復した。

  注目点は売りこまれていた東証マザーズ指数の急反発だろう。終値ベースで見ると5月19日の安値635.00から5月30日の777.15まで9連騰で142.15ポイント(22.39%)上昇した。物色面の広がりも顕著となって底打ち感を強めている。また日経ジャスダック平均も5月19日の安値1890円85銭から5月30日の2008円28銭まで117円43銭(6.21%)上昇した。個人投資家を中心に投資マインドが改善しているようだ。

  また外国為替市場では、6月5日のECB理事会での追加利下げ観測が強いため、全体としてユーロ売り優勢の展開となった。そして世界的に低金利が継続するとの観測で、週後半には米10年債利回りが再び2.5%台を割り込んだ。しかしドル・円相場は比較的落ち着いた展開が続き、概ね1ドル=101円台のレンジで膠着感を強めた。

  そして前週末30日の米国株式市場は小動きだったが、ダウ工業株30種平均株価、S&P500株価指数とも終値ベースで史上最高値を更新した。S&P500株価指数は取引時間中の史上最高値も更新した。CME日経225先物6月限(円建て)は1万4710円だった。外国為替市場も小動きで1ドル=101円70銭~80銭近辺、1ユーロ=138円70銭~80銭近辺で終了した。

  前週末30日の米国市場の結果を受けて、来週初2日の日本株は堅調なスタートとなりそうだ。ただし急ピッチの戻りに対する警戒感に加えて、週後半には4日~5日のG7首脳会議、5日のECB理事会、週末6日の米5月雇用統計という重要イベントを控えているため、主力株に関しては動き難くなる可能性もあるだろう。

  国内では日銀の追加金融緩和に対する期待感が後退する一方で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のリスク資産運用比率引き上げへの期待感が高まるとともに、これまでほとんど無視されてきた政府の「骨太の方針」「新成長戦略」に対する期待感をポジティブ材料視するコメントが増えてきた。地合い改善の兆しだろう。

  海外要因としては引き続きウクライナ、タイ、中国などの地政学リスクが撹乱要因となる。ウクライナ情勢に関しては5月25日の大統領選後にロシアに目立った動きがなく小康状態だ。軍事クーデターの形となったタイに関しては引き続き市民生活や企業活動に対する影響が焦点だ。

  中国に関しては1日に中国5月製造業PMI(国家統計局)、3日に中国5月非製造業PMI(国家統計局)、中国5月製造業PMI改定値(HSBC)、5日に中国5月サービス部門PMI(HSBC)が発表予定だが、反応は限定的だろう。一方で、南シナ海での領有権問題や新疆ウイグル自治区での爆発事件など地政学リスクが高まっている。

  株式市場での物色動向としては、急ピッチの戻りに対する警戒感や週後半の重要イベントを控えて主力株が動き難くなる可能性もあり、新興市場を中心に中小型株が先導する展開だろう。売りこまれていたネット関連、ゲーム関連、バイオ関連、新エネルギー関連などのリバウンド、そしてテーマ関連株物色の動きも強まりそうだ。空売り比率の高い銘柄に対する踏み上げの動きや、資金が回転して個人投資家のマインドが一段と改善するかも焦点だ。

  為替については、5日のECB理事会と6日の米5月雇用統計を控えて様子見ムードの強い展開だろう。概ね1ドル=101円台前半~102円台前半、1ユーロ=138円近辺~140円近辺での推移を想定する。ただし5日のECB理事会での追加利下げをかなり織り込んでいるため、予想どおりに追加利下げを決定すれば材料出尽くしの可能性もあるだろう。

  その他の注目スケジュールとしては2日の日本1~3月法人企業統計、インド中銀金融政策決定会合、米4月建設支出、米5月ISM製造業景気指数、3日の日本4月毎月勤労統計、豪中銀理事会、ユーロ圏5月消費者物価指数速報値、米4月製造業新規受注、4日の豪第1四半期GDP、ユーロ圏第1四半期GDP改定値、米4月貿易収支、米5月ADP全米雇用報告、米5月ISM非製造業景気指数、米地区連銀経済報告、4日~5日の英中銀金融政策委員会、5日の豪4月貿易収支、6日の日本4月景気動向指数などがあるだろう。

  その後は8日の中国5月貿易統計、9日の日本1~3月期GDP2次速報、日本5月景気ウォッチャー調査、日本5月消費動向調査、12日の日本4月機械受注、12日~13日の日銀金融政策決定会合、17日~18日の米FOMC(連邦公開市場委員会)とイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

【関連記事・情報】
【今日の言葉】決算ほぼ一巡、予想1株利益はわずか1.4%の増加(2014/05/20)
【株式評論家の視点】『技術立社』のリンテックは独創的市場牽引型製品創出で好業績、好利回り(2014/05/20)
【編集長の視点】物語コーポは続落スタートも連続最高純益を見直し下げ過ぎ訂正買いが再燃余地(2014/05/20)
米国が「クシャミ」をすると東京市場では業績予想のサプライズ銘柄に独自人気が還流=浅妻昭治(2014/05/19)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

関連記事